米津玄師「馬と鹿」は、BPM91・キーE♭メジャーの楽曲です。2019年発売の10thシングルでTBS系日曜劇場「ノーサイドゲーム」主題歌として知られ、公式バンドスコアにもボーカル/コーラス/ストリングス/エレキギター2本/シンセベース/ドラム&パーカッションという編成が明記される、実在のバンド演奏を前提とした定番曲です。ベース弾いてみた・ドラム譜面も実在し、クラシックとJ-POPの融合を狙った編曲(坂東祐大との共同編曲)が特徴の、静と動の対比が大きいバラード寄りのロックナンバーとして知られています。米津玄師のライブは中島宏士(Gt)・須藤優(Ba)・宮川純(Key)を含む固定サポートメンバーによるバンド編成で行われており、原曲のシンセベースパートも実際のライブでは須藤優が生のベースで演奏します。この記事ではギター(中島宏士)のマルチエフェクター設定とマーシャル単体設定、ベース(須藤優)の設定を判断基準つきでまとめました。 ※設定値はあくまで出発点です。数値そのものより、以降で示す耳での判断基準を優先して微調整してください。
目指す音の分解
- リズムギター(中島宏士): Aメロ・Bメロでストリングスと歌を邪魔しない静かなコードを刻む役割。歪みはごく薄く、輪郭よりも空気感を出すことが理想です。
- リードギター(中島宏士): サビ・間奏で感情の高まりに合わせて伸びやかなフレーズを重ねる役割。ギター1本の編成なので、リズムとの切り替わりがゲイン量とディレイの深さの差ではっきり聴き分けられることが基準になります。
- ベース(須藤優): 静かなAメロ・Bメロでは控えめに、サビでは力強く音圧を増すラインで曲の起伏を支える役割。原曲のシンセベースの質感を意識しつつ、生演奏らしい粒立ちを保つことが求められます。
- 静と動の対比を保ちながら、ストリングスと歌を邪魔せずギター・ベースの輪郭をはっきりさせるのがこの曲の音作りの軸です。
①ギター:マルチエフェクター設定(GT-1000CORE / MS-3 / G6 / GE系など共通)
Guitar → コンプ(軽め) → ドライブ(薄め) → アンプモデル(クリーン〜クランチ)
→ ブースター(リードのみ) → ディレイ → リバーブ → Amp Out
- アンプモデル設定: GAIN 25〜30%(ストリングスと歌の邪魔をしない上限)/ TREBLE 50%(耳に刺さらない範囲)/ MIDDLE 55%(削らない方針)/ BASS 35%(ベース・ストリングスの低域と被らない上限)/ LEVELはストリングスより一段控えめな音量が基準
- ドライブブロック: TS系、GAIN 15〜20%、TONE 50%、LEVEL 50%。歪みがストリングスの繊細さを邪魔しない上限が判断基準です
- ブースターブロック(リードのみ): クリーンブースト系、GAINは上げずLEVELのみ+2dB程度。サビの盛り上がりでストリングスを食わない範囲に収めるのが判断基準です
- ディレイブロック: BPM91から算出すると、8分 = 60000÷91 = 約659.3ms、付点8分 = 659.3×1.5 = 約989.0ms。静かなパートには8分659.3msを薄くタップし、サビの伸びやかなフレーズには付点8分989.0msで余韻を持たせます
- リバーブ方針: プレート系を浅めにMix 15%程度。残響がストリングスの繊細さを飲み込み始めたら深すぎるサインです
- パッチ対比表: 中島宏士の単独ギター編成のため、1人で両方を担当する場合(宅録・弾いてみた等)は下記パッチをセクションごとに切り替える運用が基本です
| 項目 | リズムパッチ(Aメロ・Bメロ用) | リードパッチ(サビ・間奏用) |
|---|---|---|
| GAIN | 25% | 35% |
| ブースター | OFF | ON |
| ディレイMix | 8分/8% | 付点8分/16% |
| リバーブMix | 12% | 18% |
②ギター:マーシャルのみの場合(JCM900 / JCM2000 / DSL系)
- アンプ設定: GAIN 3(ストリングスと歌の邪魔をしない上限)/ TREBLE 5(耳に刺さらない範囲)/ MIDDLE 6(削らない)/ BASS 4(ベース・ストリングスと被らない上限)/ PRESENCE 4(硬くなりすぎない上限)
- ピッキング強弱での展開の作り方: Aメロ・Bメロは指先で軽くタッチしてストリングスの気配を壊さず、サビ・間奏では弾き込みを強めて感情の高まりを表現するのが基本です
- 足りない機能への対処: マーシャル単体はディレイ・リバーブが無いため、付点8分989.0msの余韻を再現できる空間系ペダルを1台足すと、サビの広がりが大きく変わります
③ベース:マルチエフェクター/プロセッサー設定(GT-1000CORE / MS-3 / GT-1B系など共通)
Bass → コンプ → ドライブ/EQ(基本OFF) → アンプモデル(DI+アンプブレンド)
→ Amp/DI Out
- コンプ設定: スレッショルドは静かなパートでも粒が均一に聴こえる程度、レシオ3:1前後。アタック(粒立ち)を潰さない上限がコンプの掛けすぎを判断する基準です
- アンプモデル設定: GAIN 35%(静かなラインでも音が痩せない上限)/ BASS 55%/ LOW-MID 50%(削らない方針)/ HIGH-MID 40%(ストリングスと被らない上限)/ TREBLE 25%(刺さらない範囲)/ LEVELは曲の起伏に合わせて可変する音量が基準。DI+アンプの比率はDI7:アンプ3を起点に、静かなパートでもアタック感が残る範囲でアンプ側の色を混ぜるのが判断基準です(原曲のシンセベースらしい滑らかさを意識するなら、DI側の比率をやや高めに残すのがコツです)
- ドライブ/EQブロック(使う場合のみ): 基本OFF。サビでほんの少しだけ厚みを足したい時のみ軽くON。低音の輪郭を失わない上限まで下げるのが判断基準です
- 通常パッチ/サビパッチの対比表
| 項目 | 通常パッチ(Aメロ・Bメロ) | サビパッチ(音圧を上げる場面) |
|---|---|---|
| コンプ量 | やや強め(粒立ち優先) | 軽め(音圧優先) |
| DI:アンプ比率 | 7:3 | 6:4 |
| ドライブ | OFF | ごく薄くON |
| LEVEL | 基準値 | +2〜3dB程度 |
④ベース:アンプ(DI)のみの場合(Ampeg SVT系)
- アンプ設定: GAIN 4(静かなラインでも音が痩せない下限〜サビで暴れない上限)/ ULTRA LO 軽め(もたつかない範囲)/ ULTRA HI 軽め(硬くなりすぎない範囲)/ BASS 5/ MIDDLE 5(削らない)/ TREBLE 3(刺さらない範囲)
- 指弾き/ピック弾きでの展開の作り方: Aメロ・Bメロは指弾きで丸みのある静かな音を保ち、サビでほんの少しピック寄りの弾き方に近づけると音圧差がはっきり作れます
- 足りない機能への対処: アンプ単体はコンプの細かい調整ができないため、静かなパートの粒立ちを均す外部コンプペダルを1台足すと安定感が増します
セクション別の組み立て
- イントロ: ストリングスと歌を主役に、ギター(中島宏士)はリズムパッチで音量を抑えて静かな気配だけを作ります
- Aメロ: 歌とストリングスの音色を邪魔しないようリズムギターは音量を絞り、ベース(須藤優)は指弾きで静かなラインの粒立ちを整えます
- Bメロ: サビに向けディレイMixとリバーブを少しずつ深くし、ベースのコンプもやや軽めに移行して音圧の上昇を準備します
- サビ: ギターはリードパッチに切り替えブースターと付点8分989.0msのディレイをONにし、ベースはサビパッチで音圧を大きく上げ、感情の高まりを曲全体で表現します
- 間奏: リードギターの伸びやかなフレーズを主役に、ベースは音圧を保ちながら粒立ちを崩さないよう耳で確認します
- ラスサビ〜アウトロ: 音量・エフェクトともにこの曲で最も開放的な設定を維持しつつ、静と動の対比を最後まで保ったまま着地します
まとめ
- BPM91のディレイ基準値は8分659.3ms・付点8分989.0msです
- 中島宏士の単独ギター編成のため、宅録・弾いてみたではリズム/リードのパッチ切り替えでセクションごとの役割を表現します
- 静かなAメロ・Bメロと力強いサビの対比を保ちながら、ストリングスと歌を邪魔せず各パートの輪郭をはっきりさせるのがこの曲最大の判断基準です
- 原曲のシンセベースの滑らかさを意識するなら、ベースのDI比率をやや高めに残すのが実践的です
- 次回は同アーティストの別の代表曲の音作りも解説予定です
※この設定は実機検証前のドラフトです
設定値は出発点です。数値より耳での判断基準を優先して調整してください。
試聴シミュレーター
この曲の設定を試聴する
DELAYはこの曲のBPM(91)から計算した8分音符の値を初期反映しています。GAIN/TREBLE/MIDDLE/BASSは一般的な目安値です。曲ごとの正確な設定値・判断基準は本文の①〜④セクションを確認してください。実録音ではなくWeb Audio APIによる合成音源です(NOTICE.md参照)。