椎名林檎「NIPPON」はBPM172、キーEメジャーの行進曲調で疾走感のある楽曲です。2014年NHKサッカー放送テーマ曲として書き下ろされ、斎藤ネコ編曲による32人編成の弦楽オーケストラ(グレート栄田ストリングス)を大きくフィーチャーした楽曲として知られていますが、バンドスコア(Vo&Cho/Strings×2/S.E./E.G.×3/E.B./Drs編成、TAB付き)にはエレキギター3パートが収録されており、ギター弾き語り譜・U-FRETのコード譜も豊富に流通していることから、弦楽アレンジと共存する形でバンド編成での再現需要も高い楽曲です。この記事では、力強い弦楽アレンジを支えるギターのバンドサウンドを再現するための設定値と判断基準をまとめました。 ※設定値はあくまで出発点です。数値そのものより、以降で示す耳での判断基準を優先して微調整してください。
目指す音の分解
- リズムギター: Aメロ・Bメロ・サビを通して8分のカッティングで曲の推進力を支える役割。歪みは中程度に留め、弦楽アレンジの迫力を邪魔しないタイトな質感が理想です。
- リードギター: サビ・間奏でフレーズを彩る役割。歪みを増やすのではなく、ブーストで前に出す形で輪郭を保ちます。
- ベース: ルートを軸に8分でしっかり刻み、行進曲調の推進力を支える役割。粒立ちを保ちながらサビでわずかに前に出ます。
- 弦楽オーケストラの迫力を最優先に、ギターはその隙間を縫うタイトなカッティングに徹するのがこの曲の音作りの軸です。
①ギター:マルチエフェクター設定(GT-1000CORE / MS-3 / G6 / GE系など共通)
Guitar → コンプ(軽め) → ドライブ(中程度) → アンプモデル(クランチ)
→ ブースター(リードのみON) → ディレイ → リバーブ → Amp Out
- アンプモデル設定: GAIN 38%(8分の粒立ちが潰れない上限)/ TREBLE 52%(エッジを出しつつ耳に刺さらない範囲)/ MIDDLE 45%(ストリングスの帯域を邪魔しない範囲でやや控えめ)/ BASS 38%(ベースと被らない上限)/ LEVELはストリングスを邪魔しない音量が基準
- ドライブブロック: TS系、GAIN 28%、TONE 52%、LEVEL 52%。速いテンポのカッティングが団子にならず、各音の輪郭が残る範囲に留めるのが判断基準です
- ブースターブロック(リードのみ): クリーンブースト系、GAINは上げずLEVELのみ+3dB程度。歪み量を増やさず音量と輪郭だけを前に出すのが目的で、ゲインが上がったと感じたらやり過ぎです
- ディレイブロック: BPM172から算出すると、8分 = 60000÷172 ≒ 349ms、付点8分 = 60000÷172×1.5 ≒ 523ms。リズムは8分349msを薄くタップし、リードはサビ・間奏のフレーズで付点8分523msを軽く重ねて余韻を作ります
- リバーブ方針: ルーム系を薄めにMix 20%程度。ストリングスの残響と混ざって濁らないよう、深すぎるホール系は避けます
- パッチ対比表: ギター1本の編成のため、セクションごとに下記パッチを切り替える運用が基本です
| 項目 | リズムパッチ | リードパッチ(サビ・間奏で切替) |
|---|---|---|
| GAIN | 36% | 40% |
| ブースター | OFF | ON |
| ディレイMix | 8分/10% | 付点8分/20% |
| リバーブMix | 20% | 24% |
②ギター:マーシャルのみの場合(JCM900 / JCM2000 / DSL系)
- アンプ設定: GAIN 4〜5(8分の粒立ちが潰れない上限)/ TREBLE 6(エッジを出す範囲)/ MIDDLE 4(ストリングスの帯域を邪魔しない範囲でやや控えめ)/ BASS 4(ベースと被らない上限)/ PRESENCE 4(耳当たりが硬くならない上限)
- ピッキング強弱での展開の作り方: Aメロ・Bメロは手元を軽く絞ってタイトなカッティングにし、サビ・間奏は強めに弾き込んでフレーズの輪郭を前に出すのが基本です
- 足りない機能への対処: マーシャル単体はディレイ・リバーブが無いため、付点8分523msを再現できる空間系ペダルを1台足すと、サビ・間奏の余韻が大きく変わります
③ベース:マルチエフェクター/プロセッサー設定(GT-1000CORE / MS-3 / GT-1B系など共通)
Bass → コンプ → ドライブ/EQ(基本OFF) → アンプモデル(DI+アンプブレンド)
→ Amp/DI Out
- コンプ設定: スレッショルドは8分の粒が揃う程度、レシオ3:1前後。アタック(粒立ち)を潰さない上限がコンプの掛けすぎを判断する基準です
- アンプモデル設定: GAIN 36%(丸くなりすぎない上限)/ BASS 50%/ LOW-MID 48%(削らない方針)/ HIGH-MID 38%(ギター・ストリングスと被らない上限)/ TREBLE 32%(刺さらない範囲)/ LEVELはストリングスを邪魔しない音量が基準。DI+アンプの比率はDI7:アンプ3を起点に、指弾きのアタック感が残る範囲で耳で微調整します
- ドライブ/EQブロック(使う場合のみ): 基本OFFですが、サビでわずかに厚みを足したい時のみ軽いドライブを薄くON。低音の輪郭を失わない上限まで下げるのが判断基準です
- 通常パッチ/サビパッチの対比表
| 項目 | 通常パッチ | サビパッチ(音圧を上げる場面) |
|---|---|---|
| コンプ量 | 軽め(粒立ち優先) | やや強め(音圧優先) |
| DI:アンプ比率 | 7:3 | 6:4 |
| ドライブ | OFF | 薄くON |
| LEVEL | 基準値 | +1〜2dB程度 |
④ベース:アンプ(DI)のみの場合(Ampeg SVT系)
- アンプ設定: GAIN 3(音が割れない上限)/ ULTRA LO 軽め(団子にならない範囲)/ ULTRA HI OFF(硬くなりすぎない)/ BASS 5/ MIDDLE 4(ストリングスの帯域を邪魔しない範囲でやや控えめ)/ TREBLE 3〜4(刺さらない範囲)
- 指弾き/ピック弾きでの展開の作り方: 基本は指弾きで行進曲調の推進力を出し、サビでピックに持ち替えて音圧を足す使い分けが基本です
- 足りない機能への対処: アンプ単体はコンプの細かい調整ができないため、8分の粒立ちを均す外部コンプペダルを1台足すと通常/サビの差が安定します
セクション別の組み立て
- イントロ: ストリングスの迫力を主役に、ギターは8分カッティングで下から控えめに支えます
- Aメロ: リズムパッチのゲインを絞ってボーカルとストリングスを立て、ベースはルートを軸に推進力を支えます
- Bメロ: サビに向けディレイMixとベースの密度を少しずつ上げ、高揚感を作ります
- サビ: リードパッチに切り替えブースターと付点8分523msのディレイを軽く重ね、ベースはサビパッチで音圧を上げ、ストリングスと拮抗する厚みを作ります
- 間奏: リードギターのフレーズをストリングスと絡ませ、ルーム系リバーブで軽く広げて余韻を残します
- アウトロ: 音数を減らし、ストリングスとディレイ・リバーブの余韻だけを残して着地します
まとめ
- BPM172のディレイ基準値は8分349ms・付点8分523msです
- ギターは名越由貴夫を軸としたサポート編成のため、1本のパッチ切り替え運用が基本です
- 弦楽オーケストラの迫力を最優先に、ギターはその隙間を縫うタイトなカッティングに徹するのがこの曲最大の判断基準です
- 次回は同じ椎名林檎の他曲の音作りも解説予定です
※この設定は実機検証前のドラフトです
設定値は出発点です。数値より耳での判断基準を優先して調整してください。
試聴シミュレーター
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DELAYはこの曲のBPM(172)から計算した8分音符の値を初期反映しています。GAIN/TREBLE/MIDDLE/BASSは一般的な目安値です。曲ごとの正確な設定値・判断基準は本文の①〜④セクションを確認してください。実録音ではなくWeb Audio APIによる合成音源です(NOTICE.md参照)。