椎名林檎「長く短い祭」はBPM125、キーFメジャー(ラスサビでF♯/G♭メジャーへ転調)のファンク色の強いアップテンポの楽曲です。2015年「コカ・コーラ」サマーキャンペーンCMソングとして知られ、東京事変のギタリスト浮雲とのデュエット曲としても発表されました。2024年アリーナツアー「(生)林檎博'24-景気の回復-」時点のサポートバンド編成(Gt:名越由貴夫/Ba:鳥越啓介/Key:伊澤一葉)がセットリスト報道で確認できるほか、バンドスコア(Vo.1&Cho.1/Vo.2&Cho.2/E.Piano/Brass Sect/Key./Bass/Perc.Drs.編成、TAB付き)がフェアリー等複数出版社から現行流通し、キーボードパート単体の演奏動画も複数投稿されるほど、バンド編成での再現需要が高い定番曲です。この記事ではギター+キーボードのバンドサウンドを再現するための設定値と判断基準をまとめました。 ※設定値はあくまで出発点です。数値そのものより、以降で示す耳での判断基準を優先して微調整してください。
目指す音の分解
- リズムギター: Aメロ・Bメロ・サビを通してファンキーな16分カッティングで曲のグルーヴを支える役割。歪みは薄く留め、粒立ちのはっきりしたカッティング感が理想です。
- リードギター: 間奏でフレーズを彩る役割。歪みを増やすのではなく、ブーストで前に出す形で輪郭を保ちます。
- ベース: ルートと装飾的なフレーズを織り交ぜて8分〜16分で刻み、ファンクのグルーヴを支える役割。粒立ちを保ちながらサビでわずかに前に出ます。
- キーボード: E.ピアノとブラス系フレーズを曲を通して独立して聴かせる役割。イントロ・サビで曲の顔となるフレーズを担い、伴奏に埋もれず独立して聴こえます。
- ファンキーなグルーヴと管楽器的な華やかさを最優先に、ギターは歪みを溜め込まずカッティングの粒立ちを保つのがこの曲の音作りの軸です。
①ギター:マルチエフェクター設定(GT-1000CORE / MS-3 / G6 / GE系など共通)
Guitar → コンプ(やや強め) → ドライブ(薄め) → アンプモデル(クリーン〜薄クランチ)
→ ブースター(リードのみON) → ディレイ → リバーブ → Amp Out
- アンプモデル設定: GAIN 26%(16分カッティングの粒立ちが潰れない上限)/ TREBLE 52%(エッジを出しつつ耳に刺さらない範囲)/ MIDDLE 48%(削らない方針)/ BASS 38%(ベース・キーボードと被らない上限)/ LEVELはブラス/E.ピアノを邪魔しない音量が基準
- ドライブブロック: TS系、GAIN 15%、TONE 52%、LEVEL 50%。16分カッティングが団子にならず、各音の輪郭が残る範囲に留めるのが判断基準です
- ブースターブロック(リードのみ): クリーンブースト系、GAINは上げずLEVELのみ+3dB程度。歪み量を増やさず音量と輪郭だけを前に出すのが目的で、ゲインが上がったと感じたらやり過ぎです
- ディレイブロック: BPM125から算出すると、8分 = 60000÷125 = 480ms、付点8分 = 480×1.5 = 720ms。リズムは8分480msを薄くタップし、リードは間奏のフレーズで付点8分720msを軽く重ねて余韻を作ります
- リバーブ方針: ルーム系を薄めにMix 22%程度。ファンクのタイトなグルーヴを滲ませないよう、深すぎるホール系は避けます
- パッチ対比表: ギター1本の編成のため、セクションごとに下記パッチを切り替える運用が基本です
| 項目 | リズムパッチ | リードパッチ(間奏で切替) |
|---|---|---|
| GAIN | 24% | 28% |
| ブースター | OFF | ON |
| ディレイMix | 8分/10% | 付点8分/20% |
| リバーブMix | 22% | 26% |
②ギター:マーシャルのみの場合(JCM900 / JCM2000 / DSL系)
- アンプ設定: GAIN 3(16分カッティングの粒立ちが潰れない上限)/ TREBLE 5〜6(エッジを出す範囲)/ MIDDLE 5(削らない)/ BASS 4(ベース・キーボードと被らない上限)/ PRESENCE 3(耳当たりが硬くならない上限)
- ピッキング強弱での展開の作り方: Aメロ・Bメロは手元を軽く絞ってタイトなカッティングにし、間奏は少し強めに弾き込んでフレーズの輪郭を前に出すのが基本です
- 足りない機能への対処: マーシャル単体はディレイ・リバーブが無いため、付点8分720msを再現できる空間系ペダルを1台足すと、間奏の余韻が大きく変わります
③ベース:マルチエフェクター/プロセッサー設定(GT-1000CORE / MS-3 / GT-1B系など共通)
Bass → コンプ → ドライブ/EQ(基本OFF) → アンプモデル(DI+アンプブレンド)
→ Amp/DI Out
- コンプ設定: スレッショルドは16分の粒が揃う程度、レシオ3:1前後。アタック(粒立ち)を潰さない上限がコンプの掛けすぎを判断する基準です
- アンプモデル設定: GAIN 32%(丸くなりすぎない上限)/ BASS 48%/ LOW-MID 50%(削らない方針)/ HIGH-MID 42%(ギター・キーボードと被らない上限)/ TREBLE 35%(刺さらない範囲)/ LEVELはブラス/E.ピアノを邪魔しない音量が基準。DI+アンプの比率はDI7:アンプ3を起点に、指弾きのアタック感が残る範囲で耳で微調整します
- ドライブ/EQブロック(使う場合のみ): 基本OFFですが、サビでわずかに厚みを足したい時のみ軽いドライブを薄くON。低音の輪郭を失わない上限まで下げるのが判断基準です
- 通常パッチ/サビパッチの対比表
| 項目 | 通常パッチ | サビパッチ(音圧を上げる場面) |
|---|---|---|
| コンプ量 | 軽め(粒立ち優先) | やや強め(音圧優先) |
| DI:アンプ比率 | 7:3 | 6:4 |
| ドライブ | OFF | 薄くON |
| LEVEL | 基準値 | +1〜2dB程度 |
④ベース:アンプ(DI)のみの場合(Ampeg SVT系)
- アンプ設定: GAIN 3(音が割れない上限)/ ULTRA LO 軽め(団子にならない範囲)/ ULTRA HI OFF(硬くなりすぎない)/ BASS 5/ MIDDLE 5(削らない)/ TREBLE 3〜4(刺さらない範囲)
- 指弾き/ピック弾きでの展開の作り方: 基本は指弾きでファンキーなグルーヴを出し、サビでピックに持ち替えて音圧を足す使い分けが基本です
- 足りない機能への対処: アンプ単体はコンプの細かい調整ができないため、16分の粒立ちを均す外部コンプペダルを1台足すと通常/サビの差が安定します
⑤キーボード/シンセ音作り
- 音色カテゴリ: エレピ系(Rhodes系)+ブラス系シンセの組み合わせ。イントロ・サビで単独フレーズとして成立し、曲の顔になっているかが選定の判断基準です
- EQ方針: 300〜600Hz付近をギター・ベースと被らない範囲でわずかにカットし、E.ピアノ/ブラスの粒立ちと分離感を残します。バンド全体で音の隙間があるかを耳で確認しながら削るのが基準です
- 空間系: BPM125から8分480ms・付点8分720ms。イントロ・サビのブラスフレーズには付点8分720msのディレイを薄くMixして余韻を作り、Aメロの伴奏時は空間系を絞ってフレーズの輪郭を優先します
- セクションごとの運用: イントロはE.ピアノ/ブラスフレーズを主役に音量を上げ、Aメロ・Bメロは伴奏としてやや音量を抑え、サビはギターと並んで音数を増やし、ラスサビの転調後は音色を保ったまま音圧をさらに上げます
セクション別の組み立て
- イントロ: キーボードのE.ピアノ/ブラスフレーズを主役に、ギターは16分カッティングで下から支えます
- Aメロ: リズムパッチのゲインを絞ってボーカルを立て、ベースはグルーヴを支えます
- Bメロ: サビに向けディレイMixとベースの密度を少しずつ上げ、高揚感を作ります
- サビ: リードパッチに切り替えブースターと付点8分720msのディレイを軽く重ね、ベースはサビパッチで音圧を上げ、キーボードも音数を増やして厚みを作ります
- 間奏: リードギターのフレーズをルーム系リバーブで軽く広げ、輪郭を保ったまま余韻を残します
- ラスサビ・アウトロ: F♯/G♭メジャーへの転調に合わせて全パートの音圧をさらに上げ、最後は音数を減らしてディレイ・リバーブの余韻だけを残して着地します
まとめ
- BPM125のディレイ基準値は8分480ms・付点8分720msです
- ギターは名越由貴夫を軸としたサポート編成のため、1本のパッチ切り替え運用が基本です
- ファンキーなグルーヴと管楽器的な華やかさを最優先に、ギターは歪みを溜め込まずカッティングの粒立ちを保つのがこの曲最大の判断基準です
- 次回は同じ椎名林檎の他曲の音作りも解説予定です
※この設定は実機検証前のドラフトです
設定値は出発点です。数値より耳での判断基準を優先して調整してください。
試聴シミュレーター
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DELAYはこの曲のBPM(125)から計算した8分音符の値を初期反映しています。GAIN/TREBLE/MIDDLE/BASSは一般的な目安値です。曲ごとの正確な設定値・判断基準は本文の①〜④セクションを確認してください。実録音ではなくWeb Audio APIによる合成音源です(NOTICE.md参照)。