椎名林檎「丸の内サディスティック」はBPM100、キーE♭メジャー(平行調Cマイナー)のジャジーでファンキーな一曲です。1999年発売の2ndシングルとして知られ、このコード進行自体が「丸サ進行」としてJ-POP屈指の定番進行に数えられる代表曲です。原曲の編成はVo./Key.&Harmonica/Piano/E.B./Drs.&Perc.が核で、電気ギターは編成されていませんが、ギター弾き語りTAB譜・ソロギターアレンジTAB譜が複数公開されているほか、宇多川ヒカル&コブクロ・重信をはじめ多くのアーティストがギターを交えたバンドカバーを行っており、バンド演奏時にギターを足すアレンジが定番となっています。この記事ではキーボードを主役としつつギターを足したバンドサウンドを再現するための設定値と判断基準をまとめました。 ※設定値はあくまで出発点です。数値そのものより、以降で示す耳での判断基準を優先して微調整してください。
目指す音の分解
- リズムギター: Aメロ・Bメロ・サビを通してジャジーなコードカッティングでキーボードのグルーヴに寄り添う役割。原曲に無いパートを足す位置づけのため、歪みは薄く留め、ピアノの邪魔をしないクリーン〜薄クランチの質感が理想です。
- リードギター: 間奏でフレーズを彩る役割。歪みを増やすのではなく、ブーストで前に出す形で輪郭を保ちます。
- ベース: スラップも交えたファンキーなラインで曲の骨格を支える主役級の役割。粒立ちを保ちながらサビでわずかに前に出ます。
- キーボード: ピアノ(丸サ進行)と鍵盤ハーモニカの合いの手で曲の顔そのものを担う主役の役割。曲を通して独立して聴こえます。
- キーボードとベースが主役の曲であることを最優先に、ギターは丸サ進行のコードを邪魔しない控えめな帯域配分を保つのがこの曲の音作りの軸です。
①ギター:マルチエフェクター設定(GT-1000CORE / MS-3 / G6 / GE系など共通)
Guitar → コンプ(軽め) → ドライブ(薄め) → アンプモデル(クリーン〜薄クランチ)
→ ブースター(リードのみON) → ディレイ → リバーブ → Amp Out
- アンプモデル設定: GAIN 18%(コードの分離感が残る上限)/ TREBLE 46%(エッジを出しつつ耳に刺さらない範囲)/ MIDDLE 46%(ピアノの帯域を空ける方針)/ BASS 34%(ベース・ピアノと被らない上限)/ LEVELはピアノ・鍵盤ハーモニカを邪魔しない音量が基準
- ドライブブロック: TS系、GAIN 10%、TONE 46%、LEVEL 46%。「歪んでいる」と感じるより「エッジがわずかに立っている」と感じる程度に留めるのが判断基準で、これを超えると丸サ進行のコードが濁ります
- ブースターブロック(リードのみ): クリーンブースト系、GAINは上げずLEVELのみ+3dB程度。歪み量を増やさず音量と輪郭だけを前に出すのが目的で、ゲインが上がったと感じたらやり過ぎです
- ディレイブロック: BPM100から算出すると、8分 = 60000÷100 = 600ms、付点8分 = 600×1.5 = 900ms。リズムはディレイを薄く抑えてジャジーな粒立ちを優先し、間奏のフレーズで付点8分900msを軽く重ねて余韻を作ります
- リバーブ方針: ルーム系を薄めにMix 24%程度。ジャジーな空気感を出しつつ、深すぎるホール系でピアノとの分離感が失われないよう注意します
- パッチ対比表: ギター1本の編成のため、セクションごとに下記パッチを切り替える運用が基本です
| 項目 | リズムパッチ | リードパッチ(間奏で切替) |
|---|---|---|
| GAIN | 18% | 22% |
| ブースター | OFF | ON |
| ディレイMix | 8分/8% | 付点8分/18% |
| リバーブMix | 24% | 28% |
②ギター:マーシャルのみの場合(JCM900 / JCM2000 / DSL系)
- アンプ設定: GAIN 2(コードの分離感が残る上限)/ TREBLE 5(エッジを出す範囲)/ MIDDLE 5(ピアノの帯域を空ける)/ BASS 3(ベース・ピアノと被らない上限)/ PRESENCE 3(耳当たりが硬くならない上限)
- ピッキング強弱での展開の作り方: Aメロ・Bメロは手元を軽く絞ってジャジーなコードを丁寧に鳴らし、間奏は少し強めに弾き込んでフレーズの輪郭を前に出すのが基本です
- 足りない機能への対処: マーシャル単体はディレイ・リバーブが無いため、付点8分900msを再現できる空間系ペダルを1台足すと、間奏の余韻が大きく変わります
③ベース:マルチエフェクター/プロセッサー設定(GT-1000CORE / MS-3 / GT-1B系など共通)
Bass → コンプ → ドライブ/EQ(基本OFF) → アンプモデル(DI+アンプブレンド)
→ Amp/DI Out
- コンプ設定: スレッショルドはスラップの粒が揃う程度、レシオ3:1前後。アタック(粒立ち)を潰さない上限がコンプの掛けすぎを判断する基準です
- アンプモデル設定: GAIN 34%(丸くなりすぎない上限)/ BASS 50%/ LOW-MID 50%(削らない方針)/ HIGH-MID 42%(ギター・ピアノと被らない上限)/ TREBLE 36%(スラップの粒立ちを出す範囲)/ LEVELはこの曲の主役級として堂々と鳴らす音量が基準。DI+アンプの比率はDI6:アンプ4を起点に、指弾き・スラップのアタック感が残る範囲で耳で微調整します
- ドライブ/EQブロック(使う場合のみ): 基本OFFですが、サビでわずかに厚みを足したい時のみ軽いドライブを薄くON。低音の輪郭を失わない上限まで下げるのが判断基準です
- 通常パッチ/サビパッチの対比表
| 項目 | 通常パッチ | サビパッチ(音圧を上げる場面) |
|---|---|---|
| コンプ量 | 軽め(粒立ち優先) | やや強め(音圧優先) |
| DI:アンプ比率 | 6:4 | 5:5 |
| ドライブ | OFF | 薄くON |
| LEVEL | 基準値 | +1〜2dB程度 |
④ベース:アンプ(DI)のみの場合(Ampeg SVT系)
- アンプ設定: GAIN 4(音が割れない上限)/ ULTRA LO 軽め(団子にならない範囲)/ ULTRA HI 軽め(スラップの粒立ちを出す範囲)/ BASS 5/ MIDDLE 5(削らない)/ TREBLE 4(刺さらない範囲)
- 指弾き/ピック弾きでの展開の作り方: 基本は指弾き・スラップでファンキーなグルーヴを出し、サビでピックに持ち替えて音圧をわずかに足す使い分けが基本です
- 足りない機能への対処: アンプ単体はコンプの細かい調整ができないため、スラップの粒立ちを均す外部コンプペダルを1台足すと通常/サビの差が安定します
⑤キーボード/シンセ音作り
- 音色カテゴリ: アコースティックピアノ系を主役に、間奏やAメロの合いの手には鍵盤ハーモニカ系(リード系)音色を薄く重ねます。曲を通してコード進行そのものを聴かせる主役パートとして成立しているかが選定の判断基準で、ここが最も重要な音色です
- EQ方針: 200〜400Hz付近をギター・ベースと被らない範囲でわずかに整理し、丸サ進行のコード分離感を最優先で保ちます。バンド全体で音の隙間があるかを耳で確認しながら削るのが基準です
- 空間系: BPM100から8分600ms・付点8分900ms。ピアノは基本的にディレイを薄く抑えてコードの分離感を優先し、鍵盤ハーモニカの合いの手フレーズにのみ8分600msを軽くMixして余韻を出します
- セクションごとの運用: イントロ・Aメロはピアノのコードカッティングを主役に据え、Bメロで鍵盤ハーモニカの合いの手を薄く重ね、サビはピアノの音量をベースと拮抗するまで上げて曲を牽引します
セクション別の組み立て
- イントロ: キーボードの丸サ進行コードカッティングで曲の骨格を提示し、ベースはスラップを交えて土台を作ります
- Aメロ: 歌を邪魔しないようリズムギターのゲインを絞り、キーボードのコード感を主役に聴かせます
- Bメロ: サビに向けギターのディレイMixとベースの密度を少しずつ上げ、鍵盤ハーモニカの合いの手で高揚感を作ります
- サビ: リードパッチに切り替え付点8分900msのディレイを軽く重ね、ベースはサビパッチで音圧を上げ、キーボードも音量を上げてベースと拮抗させます
- 間奏: リードギターのフレーズとキーボードを交互に立たせ、ルーム系リバーブで余韻を残します
- アウトロ: 音数を減らし、キーボードとベースの余韻だけを残して静かに着地します
まとめ
- BPM100のディレイ基準値は8分600ms・付点8分900msです
- 原曲にギターは編成されていませんが、ギター弾き語り・ソロギターTAB譜や多数のバンドカバーが実在するため、ギターを足したバンド演奏アレンジが定番として成立しています
- キーボードとベースが主役の曲であることを最優先に、ギターは丸サ進行のコードを邪魔しない控えめな帯域配分を保つのがこの曲最大の判断基準です
- 次回は同じ椎名林檎の他曲の音作りも解説予定です
※この設定は実機検証前のドラフトです
設定値は出発点です。数値より耳での判断基準を優先して調整してください。
試聴シミュレーター
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DELAYはこの曲のBPM(100)から計算した8分音符の値を初期反映しています。GAIN/TREBLE/MIDDLE/BASSは一般的な目安値です。曲ごとの正確な設定値・判断基準は本文の①〜④セクションを確認してください。実録音ではなくWeb Audio APIによる合成音源です(NOTICE.md参照)。