米津玄師「Lemon」は、BPM87・キーG♯マイナー(B メジャーの平行調)の楽曲です。2018年発売の8thシングルでTBS系金曜ドラマ「アンナチュラル」主題歌として国内歴代トップクラスの再生回数を記録し、公式バンドスコアにもボーカル/コーラス/ピアノ/キーボード/エレキギター2本/5弦エレキベース/ドラム/パーカッションの編成が明記される、実在のバンド演奏を前提とした定番曲です。米津玄師のライブは中島宏士(Gt)・須藤優(Ba)・宮川純(Key)を含む固定サポートメンバーによるバンド編成で行われており、この記事ではギター(中島宏士)のマルチエフェクター設定とマーシャル単体設定、ベース(須藤優)の設定、そして曲の顔であるイントロのピアノフレーズを担うキーボード(宮川純)の設定を判断基準つきでまとめました。 ※設定値はあくまで出発点です。数値そのものより、以降で示す耳での判断基準を優先して微調整してください。
目指す音の分解
- リズムギター(中島宏士): Aメロ・Bメロでコードを静かに刻み、ピアノと歌を邪魔しない控えめな存在感を保つ役割。歪みは薄く、輪郭よりも空気感を出すことが理想です。
- リードギター(中島宏士): サビ・間奏で伸びやかなオブリガードを重ねる役割。ギター1本の編成なので、リズムとの切り替わりがゲイン量とディレイの深さの差ではっきり聴き分けられることが基準になります。
- ベース(須藤優): 終始落ち着いた8分・4分主体のラインで曲の低音を支える役割。走らず沈み込みすぎない安定感が求められます。
- キーボード(宮川純): イントロを象徴するピアノフレーズを軸に、曲全体を通して歌の隙間を埋める装飾フレーズを担う役割。伴奏に埋もれず、独立して聴こえる粒立ちの良さが理想です。
- 静かな緊張感を保ちながら、ピアノ・ギター・ベースそれぞれの音の輪郭をぼやけさせないのがこの曲の音作りの軸です。
①ギター:マルチエフェクター設定(GT-1000CORE / MS-3 / G6 / GE系など共通)
Guitar → コンプ(軽め) → ドライブ(薄め) → アンプモデル(クリーン〜クランチ)
→ ブースター(リードのみ) → ディレイ → リバーブ → Amp Out
- アンプモデル設定: GAIN 25〜30%(歌とピアノの邪魔をしない上限)/ TREBLE 50%(耳に刺さらない範囲)/ MIDDLE 55%(削らない方針)/ BASS 35%(ベース・ピアノの低域と被らない上限)/ LEVELはピアノフレーズより一段控えめな音量が基準
- ドライブブロック: TS系、GAIN 15〜20%、TONE 50%、LEVEL 50%。歪みが耳につかず、あくまでピアノを支える質感に収まる上限が判断基準です
- ブースターブロック(リードのみ): クリーンブースト系、GAINは上げずLEVELのみ+2dB程度。間奏のオブリガードが前に出すぎてピアノを食わない範囲に収めるのが判断基準です
- ディレイブロック: BPM87から算出すると、8分 = 60000÷87 = 約689.7ms、付点8分 = 689.7×1.5 = 約1034.5ms。リズムには8分689.7msを薄くタップし、間奏のオブリガードには付点8分1034.5msで余韻を持たせます
- リバーブ方針: プレート系を浅めにMix 15%程度。残響がピアノの粒立ちを飲み込み始めたら深すぎるサインです
- パッチ対比表: 中島宏士の単独ギター編成のため、1人で両方を担当する場合(宅録・弾いてみた等)は下記パッチをセクションごとに切り替える運用が基本です
| 項目 | リズムパッチ(Aメロ・Bメロ用) | リードパッチ(サビ・間奏用) |
|---|---|---|
| GAIN | 25% | 35% |
| ブースター | OFF | ON |
| ディレイMix | 8分/8% | 付点8分/16% |
| リバーブMix | 12% | 18% |
②ギター:マーシャルのみの場合(JCM900 / JCM2000 / DSL系)
- アンプ設定: GAIN 3(歌・ピアノを邪魔しない上限)/ TREBLE 5(耳に刺さらない範囲)/ MIDDLE 6(削らない)/ BASS 4(ピアノ・ベースと被らない上限)/ PRESENCE 4(硬くなりすぎない上限)
- ピッキング強弱での展開の作り方: Aメロ・Bメロは指先で軽くタッチしてピアノの気配を壊さず、サビ・間奏では弾き込みを強めてオブリガードを前に出すのが基本です
- 足りない機能への対処: マーシャル単体はディレイ・リバーブが無いため、付点8分1034.5msの余韻を再現できる空間系ペダルを1台足すと、間奏の広がりが大きく変わります
③ベース:マルチエフェクター/プロセッサー設定(GT-1000CORE / MS-3 / GT-1B系など共通)
Bass → コンプ → ドライブ/EQ(基本OFF) → アンプモデル(DI+アンプブレンド)
→ Amp/DI Out
- コンプ設定: スレッショルドは8分・4分の粒が均一に聴こえる程度、レシオ3:1前後。アタック(粒立ち)を潰さない上限がコンプの掛けすぎを判断する基準です
- アンプモデル設定: GAIN 35%(落ち着いたラインでも音が痩せない上限)/ BASS 55%/ LOW-MID 50%(削らない方針)/ HIGH-MID 40%(ピアノと被らない上限)/ TREBLE 25%(刺さらない範囲)/ LEVELは曲全体を通して一定の音量が基準。DI+アンプの比率はDI7:アンプ3を起点に、静かなパートでもアタック感が残る範囲でアンプ側の色を混ぜるのが判断基準です
- ドライブ/EQブロック(使う場合のみ): 基本OFF。サビでほんの少しだけ厚みを足したい時のみ軽くON。低音の輪郭を失わない上限まで下げるのが判断基準です
- 通常パッチ/サビパッチの対比表
| 項目 | 通常パッチ(Aメロ・Bメロ) | サビパッチ(音圧を上げる場面) |
|---|---|---|
| コンプ量 | やや強め(粒立ち優先) | 軽め(音圧優先) |
| DI:アンプ比率 | 7:3 | 6:4 |
| ドライブ | OFF | ごく薄くON |
| LEVEL | 基準値 | +1〜2dB程度 |
④ベース:アンプ(DI)のみの場合(Ampeg SVT系)
- アンプ設定: GAIN 4(落ち着いたラインでも音が痩せない下限〜サビで暴れない上限)/ ULTRA LO 軽め(もたつかない範囲)/ ULTRA HI 軽め(硬くなりすぎない範囲)/ BASS 5/ MIDDLE 5(削らない)/ TREBLE 3(刺さらない範囲)
- 指弾き/ピック弾きでの展開の作り方: 曲を通して指弾きで丸みのある音を保ち、サビでほんの少しピック寄りの弾き方に近づけると音圧差がはっきり作れます
- 足りない機能への対処: アンプ単体はコンプの細かい調整ができないため、落ち着いたラインの粒立ちを均す外部コンプペダルを1台足すと安定感が増します
⑤キーボード/シンセ音作り
- 音色カテゴリ: アコースティックピアノ系。イントロから曲を通して伴奏に埋もれず、歌の隙間を埋める独立したフレーズとして聴こえるかが選定の判断基準です(公式バンドスコアにもピアノ・キーボードのパートが単独で収録されるほど独立性の高いフレーズです)。原曲のクレジットはピアノ/キーボードという系統表記にとどまるため、特定の音源名を決め打ちせず、粒立ちの良い柔らかめのアコースティックピアノ系の音色を選ぶのが実践的です
- EQ方針: 300〜500Hz付近をギター・ベースと被らない範囲でわずかにカット、2〜4kHz付近はタッチの粒立ちを活かす方向でわずかに持ち上げます。バンド全体で音の隙間があるかを耳で確認しながら削る/持ち上げるのが基準です
- 空間系: BPM87から8分689.7ms・付点8分1034.5ms。イントロのピアノフレーズには付点8分1034.5msを薄くMixして静かな緊張感を保ったまま奥行きを足し、歌が主体のAメロ・Bメロではディレイを絞ってコード感と歌詞の聴き取りやすさを優先します
- セクションごとの運用: イントロはピアノフレーズを主役に音量を上げ、Aメロ・Bメロは歌の伴奏に回って音量を絞り、サビでは歌と重ならない高域を選んで存在感を保ちます。間奏は再びピアノフレーズを前に出し、曲の静かな緊張感を途切れさせないようにします
セクション別の組み立て
- イントロ: キーボード(宮川純)のピアノフレーズを主役に、ギター(中島宏士)はリズムパッチで音量を抑えて静かな気配だけを作ります
- Aメロ: 歌とピアノの音色を邪魔しないようリズムギターは音量を絞り、ベース(須藤優)は指弾きで落ち着いたラインの粒立ちを整えます
- Bメロ: サビに向けディレイMixとリバーブを少しずつ深くし、ベースのコンプもやや軽めに移行して音圧の上昇を準備します
- サビ: ギターはリードパッチに切り替えブースターと付点8分1034.5msのディレイをONにし、ベースはサビパッチで音圧を少し上げ、キーボードも音量を足して曲全体の緊張感を高めます
- 間奏: リードギターとキーボードのピアノフレーズを対等に鳴らし、互いの余白を潰さないよう音量バランスを耳で確認します
- ラスサビ〜アウトロ: 音量・エフェクトともにこの曲で最も開放的な設定を維持しつつ、静かな緊張感を最後まで保ったまま着地します
まとめ
- BPM87のディレイ基準値は8分689.7ms・付点8分1034.5msです
- 中島宏士の単独ギター編成のため、宅録・弾いてみたではリズム/リードのパッチ切り替えでセクションごとの役割を表現します
- イントロを象徴するアコースティックピアノのフレーズを軸に据え、静かな緊張感を保ったまま音の輪郭をはっきりさせるのがこの曲最大の判断基準です
- キーボードは特定音源名を決め打ちせず、粒立ちの良い柔らかめのアコースティックピアノ系の音色を選ぶのが実践的です
- 次回は同アーティストの別の代表曲の音作りも解説予定です
※この設定は実機検証前のドラフトです
設定値は出発点です。数値より耳での判断基準を優先して調整してください。
試聴シミュレーター
この曲の設定を試聴する
DELAYはこの曲のBPM(87)から計算した8分音符の値を初期反映しています。GAIN/TREBLE/MIDDLE/BASSは一般的な目安値です。曲ごとの正確な設定値・判断基準は本文の①〜④セクションを確認してください。実録音ではなくWeb Audio APIによる合成音源です(NOTICE.md参照)。