米津玄師「KICK BACK」は、BPM204・キーD♭メジャー(半音下げチューニング、曲中で目まぐるしく転調する)の楽曲です。2022年発売のTVアニメ「チェンソーマン」オープニングテーマで、公式バンドスコアにもボーカル/コーラス/キーボード3本/エレキギター2本/エレキベース/パーカッション/ドラムという編成が明記される、実在のバンド演奏を前提とした定番曲です。ギター・ベースそれぞれの弾いてみた動画も非常に多く実在し、米津玄師の楽曲の中でも屈指の疾走感を持つハードロック寄りのナンバーとして知られています。米津玄師のライブは中島宏士(Gt)・須藤優(Ba)・宮川純(Key)を含む固定サポートメンバーによるバンド編成で行われており、この記事ではギター(中島宏士)のマルチエフェクター設定とマーシャル単体設定、ベース(須藤優)の設定を判断基準つきでまとめました。 ※設定値はあくまで出発点です。数値そのものより、以降で示す耳での判断基準を優先して微調整してください。
目指す音の分解
- リズムギター(中島宏士): Aメロ・Bメロで疾走感のあるパワーコードを刻み、BPM204という速いテンポでも音が団子にならない粒立ちを保つ役割。歪みはやや強めでも輪郭がぼやけない上限を守ることが理想です。
- リードギター(中島宏士): サビ・間奏で曲を貫く鋭いフレーズを弾く役割。ギター1本の編成なので、リズムとの切り替わりがゲイン量とディレイの深さの差ではっきり聴き分けられることが基準になります。
- ベース(須藤優): 速いテンポを支える8分・16分主体の重いラインで曲の推進力を作る役割。走らず粒が潰れない安定感が求められます。
- 204という速いテンポでもコンプとゲインの上限を守り、疾走感を保ったまま各パートの輪郭をはっきりさせるのがこの曲の音作りの軸です。
①ギター:マルチエフェクター設定(GT-1000CORE / MS-3 / G6 / GE系など共通)
Guitar → コンプ(軽め) → ドライブ(強め) → アンプモデル(ハイゲイン)
→ ブースター(リードのみ) → ディレイ → リバーブ → Amp Out
- アンプモデル設定: GAIN 50〜55%(速いパワーコードでも音が団子にならない上限)/ TREBLE 55%(耳に刺さらない範囲)/ MIDDLE 45%(削りすぎない下限)/ BASS 35%(ベースの低域と被らない上限)/ LEVELはリードフレーズが埋もれない程度が基準
- ドライブブロック: TS系またはディストーション系、GAIN 40〜45%、TONE 55%、LEVEL 50%。速いピッキングでも音の粒が潰れて団子にならない上限が判断基準です
- ブースターブロック(リードのみ): クリーンブースト系、GAINは上げずLEVELのみ+2dB程度。間奏の鋭いフレーズが前に出すぎてボーカルを食わない範囲に収めるのが判断基準です
- ディレイブロック: BPM204から算出すると、8分 = 60000÷204 = 約294.1ms、付点8分 = 294.1×1.5 = 約441.2ms。速いテンポなので基本は8分294.1msを薄くタップし、サビの伸びやかなフレーズには付点8分441.2msで余韻を持たせます
- リバーブ方針: プレート系を浅めにMix 10%程度。速いパワーコードの粒立ちが残響で滲み始めたら深すぎるサインです
- パッチ対比表: 中島宏士の単独ギター編成のため、1人で両方を担当する場合(宅録・弾いてみた等)は下記パッチをセクションごとに切り替える運用が基本です
| 項目 | リズムパッチ(Aメロ・Bメロ用) | リードパッチ(サビ・間奏用) |
|---|---|---|
| GAIN | 50% | 60% |
| ブースター | OFF | ON |
| ディレイMix | 8分/6% | 付点8分/12% |
| リバーブMix | 8% | 13% |
②ギター:マーシャルのみの場合(JCM900 / JCM2000 / DSL系)
- アンプ設定: GAIN 6(速いパワーコードでも音が団子にならない上限)/ TREBLE 5(耳に刺さらない範囲)/ MIDDLE 5(削りすぎない下限)/ BASS 4(ベースと被らない上限)/ PRESENCE 5(硬くなりすぎない上限)
- ピッキング強弱での展開の作り方: Aメロ・Bメロはミュートを効かせたタイトなピッキングで疾走感を保ち、サビ・間奏では弾き込みを強めて鋭いフレーズを前に出すのが基本です
- 足りない機能への対処: マーシャル単体はディレイ・リバーブが無いため、付点8分441.2msの余韻を再現できる空間系ペダルを1台足すと、間奏の広がりが大きく変わります
③ベース:マルチエフェクター/プロセッサー設定(GT-1000CORE / MS-3 / GT-1B系など共通)
Bass → コンプ → ドライブ/EQ(基本OFF) → アンプモデル(DI+アンプブレンド)
→ Amp/DI Out
- コンプ設定: スレッショルドは速い16分の粒が均一に聴こえる程度、レシオ3:1〜4:1前後。アタック(粒立ち)を潰さない上限がコンプの掛けすぎを判断する基準です
- アンプモデル設定: GAIN 45%(速く重いラインでも音が痩せない上限)/ BASS 55%/ LOW-MID 50%(削らない方針)/ HIGH-MID 40%(ギターと被らない上限)/ TREBLE 25%(刺さらない範囲)/ LEVELは曲全体を通して推進力を支える音量が基準。DI+アンプの比率はDI6:アンプ4を起点に、速いパッセージでもアタック感が残る範囲でアンプ側の色を混ぜるのが判断基準です
- ドライブ/EQブロック(使う場合のみ): サビでベースにもわずかに歪みを足す構成も見られるため、使う場合は軽くON。低音の輪郭を失わない上限まで下げるのが判断基準です
- 通常パッチ/サビパッチの対比表
| 項目 | 通常パッチ(Aメロ・Bメロ) | サビパッチ(音圧を上げる場面) |
|---|---|---|
| コンプ量 | やや強め(粒立ち優先) | 軽め(音圧優先) |
| DI:アンプ比率 | 6:4 | 5:5 |
| ドライブ | OFF | 軽くON |
| LEVEL | 基準値 | +2dB程度 |
④ベース:アンプ(DI)のみの場合(Ampeg SVT系)
- アンプ設定: GAIN 6(速く重いラインでも音が痩せない下限〜サビで暴れない上限)/ ULTRA LO 軽め(もたつかない範囲)/ ULTRA HI 軽め(硬くなりすぎない範囲)/ BASS 5/ MIDDLE 5(削らない)/ TREBLE 3(刺さらない範囲)
- 指弾き/ピック弾きでの展開の作り方: 曲を通してピック弾きでアタックのはっきりした音を保ち、サビでほんの少し弦を強く押し込むと音圧差がはっきり作れます
- 足りない機能への対処: アンプ単体はコンプの細かい調整ができないため、速い16分の粒立ちを均す外部コンプペダルを1台足すと安定感が増します
セクション別の組み立て
- イントロ: ギター(中島宏士)はリズムパッチで速いパワーコードの輪郭だけを整え、ベース(須藤優)は指弾きまたはピック弾きで推進力のあるラインの粒立ちを揃えます
- Aメロ: 歌を邪魔しないようリズムギターは音量を絞り、ベースは通常パッチで落ち着いたコンプ量を保ちます
- Bメロ: 目まぐるしい転調に合わせてディレイMixとリバーブを少しずつ深くし、ベースのコンプもやや軽めに移行して音圧の上昇を準備します
- サビ: ギターはリードパッチに切り替えブースターと付点8分441.2msのディレイをONにし、ベースはサビパッチで音圧を少し上げ、鋭いフレーズを曲の中心に据えます
- 間奏: リードギターの鋭いフレーズを主役に、ベースは推進力を落とさず粒立ちを保ちます
- ラスサビ〜アウトロ: 音量・エフェクトともにこの曲で最も開放的な設定を維持しつつ、204という速いテンポの疾走感を最後まで保ったまま着地します
まとめ
- BPM204のディレイ基準値は8分294.1ms・付点8分441.2msです
- 中島宏士の単独ギター編成のため、宅録・弾いてみたではリズム/リードのパッチ切り替えでセクションごとの役割を表現します
- 速いテンポでも音が団子にならないよう、コンプとゲインの上限を耳で確認しながら攻めるのがこの曲最大の判断基準です
- 目まぐるしい転調に対応するため、空間系のMix量をセクションごとに細かく調整するのが実践的です
- 次回は同アーティストの別の代表曲の音作りも解説予定です
※この設定は実機検証前のドラフトです
設定値は出発点です。数値より耳での判断基準を優先して調整してください。
試聴シミュレーター
この曲の設定を試聴する
DELAYはこの曲のBPM(204)から計算した8分音符の値を初期反映しています。GAIN/TREBLE/MIDDLE/BASSは一般的な目安値です。曲ごとの正確な設定値・判断基準は本文の①〜④セクションを確認してください。実録音ではなくWeb Audio APIによる合成音源です(NOTICE.md参照)。