椎名林檎「本能」はBPM97(体感は倍テンポ194に近い疾走感のあるロックナンバー)、キーDマイナー(ラスサビでEマイナーへ転調)の代表曲です。1999年発売の4thシングルとしてミリオンヒットとなり、ナース服姿でガラスを叩き割るミュージックビデオでも知られる、椎名林檎の楽曲の中でも特にバンド演奏の再現需要が高い定番曲です。2024年アリーナツアー「(生)林檎博'24-景気の回復-」時点のサポートバンド編成(Gt:名越由貴夫/Ba:鳥越啓介/Key:伊澤一葉)がセットリスト報道で確認できるほか、バンドスコア(リットーミュージック・シンコーミュージック等複数出版社、Vo./Gt./Key./Ba./Dr.編成、TAB付き)が現行流通し、ギター・ベースのTAB動画も豊富に見つかることから、バンド編成での再現需要が高い曲です。この記事ではギターのバンドサウンドを再現するための設定値と判断基準をまとめました。 ※設定値はあくまで出発点です。数値そのものより、以降で示す耳での判断基準を優先して微調整してください。
目指す音の分解
- リズムギター: Aメロ・Bメロ・サビを通してエッジの立ったカッティングで曲の疾走感を支える役割。歪みはやや強めにし、粒立ちを保った攻撃的な質感が理想です。
- リードギター: サビ・間奏でフレーズを彩る役割。歪みを増やすのではなく、ブーストで前に出す形で輪郭を保ちます。
- ベース: ルートを軸に8分〜16分で力強く刻み、疾走感のあるグルーヴを支える役割。粒立ちを保ちながらサビでわずかに前に出ます。
- 疾走感とロックな攻撃性を最優先に、ギターは歪みを溜め込みすぎず粒立ちを保つのがこの曲の音作りの軸です。
①ギター:マルチエフェクター設定(GT-1000CORE / MS-3 / G6 / GE系など共通)
Guitar → コンプ(軽め) → ドライブ(強め) → アンプモデル(クランチ〜ハイゲイン)
→ ブースター(リードのみON) → ディレイ → リバーブ → Amp Out
- アンプモデル設定: GAIN 48%(カッティングの粒立ちが潰れない上限)/ TREBLE 58%(エッジを出しつつ耳に刺さらない範囲)/ MIDDLE 48%(削らない方針)/ BASS 40%(ベースと被らない上限)/ LEVELは歌を邪魔しない音量が基準
- ドライブブロック: TS系、GAIN 38%、TONE 58%、LEVEL 55%。速いテンポのカッティングが団子にならず、各音の輪郭が残る範囲に留めるのが判断基準です
- ブースターブロック(リードのみ): クリーンブースト系、GAINは上げずLEVELのみ+3dB程度。歪み量を増やさず音量と輪郭だけを前に出すのが目的で、ゲインが上がったと感じたらやり過ぎです
- ディレイブロック: BPM97から算出すると、8分 = 60000÷97 ≒ 619ms、付点8分 = 60000÷97×1.5 ≒ 928ms。リズムは8分619msを薄くタップし、リードはサビ・間奏のフレーズで付点8分928msを軽く重ねて余韻を作ります
- リバーブ方針: ルーム系を薄めにMix 20%程度。攻撃的なカッティングが滲まないよう、深すぎるホール系は避けます
- パッチ対比表: ギター1本の編成のため、セクションごとに下記パッチを切り替える運用が基本です
| 項目 | リズムパッチ | リードパッチ(サビ・間奏で切替) |
|---|---|---|
| GAIN | 46% | 50% |
| ブースター | OFF | ON |
| ディレイMix | 8分/10% | 付点8分/20% |
| リバーブMix | 20% | 25% |
②ギター:マーシャルのみの場合(JCM900 / JCM2000 / DSL系)
- アンプ設定: GAIN 6(カッティングの粒立ちが潰れない上限)/ TREBLE 6(エッジを出す範囲)/ MIDDLE 5(削らない)/ BASS 4(ベースと被らない上限)/ PRESENCE 4(耳当たりが硬くならない上限)
- ピッキング強弱での展開の作り方: Aメロ・Bメロは手元を軽く絞ってタイトなカッティングにし、サビ・間奏は強めに弾き込んでフレーズの輪郭を前に出すのが基本です
- 足りない機能への対処: マーシャル単体はディレイ・リバーブが無いため、付点8分928msを再現できる空間系ペダルを1台足すと、サビ・間奏の余韻が大きく変わります
③ベース:マルチエフェクター/プロセッサー設定(GT-1000CORE / MS-3 / GT-1B系など共通)
Bass → コンプ → ドライブ/EQ(基本OFF) → アンプモデル(DI+アンプブレンド)
→ Amp/DI Out
- コンプ設定: スレッショルドは8分の粒が揃う程度、レシオ3:1前後。アタック(粒立ち)を潰さない上限がコンプの掛けすぎを判断する基準です
- アンプモデル設定: GAIN 40%(丸くなりすぎない上限)/ BASS 50%/ LOW-MID 50%(削らない方針)/ HIGH-MID 42%(ギターと被らない上限)/ TREBLE 35%(刺さらない範囲)/ LEVELは歌を邪魔しない音量が基準。DI+アンプの比率はDI7:アンプ3を起点に、指弾きのアタック感が残る範囲で耳で微調整します
- ドライブ/EQブロック(使う場合のみ): 基本OFFですが、サビでわずかに厚みを足したい時のみ軽いドライブを薄くON。低音の輪郭を失わない上限まで下げるのが判断基準です
- 通常パッチ/サビパッチの対比表
| 項目 | 通常パッチ | サビパッチ(音圧を上げる場面) |
|---|---|---|
| コンプ量 | 軽め(粒立ち優先) | やや強め(音圧優先) |
| DI:アンプ比率 | 7:3 | 6:4 |
| ドライブ | OFF | 薄くON |
| LEVEL | 基準値 | +1〜2dB程度 |
④ベース:アンプ(DI)のみの場合(Ampeg SVT系)
- アンプ設定: GAIN 4(音が割れない上限)/ ULTRA LO 軽め(団子にならない範囲)/ ULTRA HI OFF(硬くなりすぎない)/ BASS 5/ MIDDLE 5(削らない)/ TREBLE 4(刺さらない範囲)
- 指弾き/ピック弾きでの展開の作り方: 基本はピック弾きで疾走感のあるグルーヴを出し、Aメロなど落ち着いた場面では指弾きに切り替えて質感を変える使い分けが基本です
- 足りない機能への対処: アンプ単体はコンプの細かい調整ができないため、8分の粒立ちを均す外部コンプペダルを1台足すと通常/サビの差が安定します
セクション別の組み立て
- イントロ: リズムギターのカッティングで疾走感を提示し、ベースは8分〜16分で推進力を作ります
- Aメロ: 歌を邪魔しないようリズムパッチのゲインを絞り、ベースはルートを軸にグルーヴを支えます
- Bメロ: サビに向けディレイMixとベースの密度を少しずつ上げ、高揚感を作ります
- サビ: リードパッチに切り替えブースターと付点8分928msのディレイを軽く重ね、ベースはサビパッチで音圧を上げます
- 間奏: リードギターのフレーズをルーム系リバーブで軽く広げ、輪郭を保ったまま余韻を残します
- ラスサビ・アウトロ: Eマイナーへの転調に合わせて音圧をさらに上げ、最後は音数を減らしてディレイとリバーブの余韻だけを残して着地します
まとめ
- BPM97のディレイ基準値は8分619ms・付点8分928msです
- ギターは名越由貴夫を軸としたサポート編成のため、1本のパッチ切り替え運用が基本です
- 疾走感とロックな攻撃性を最優先に、ギターは歪みを溜め込みすぎず粒立ちを保つのがこの曲最大の判断基準です
- 次回は同じ椎名林檎の他曲の音作りも解説予定です
※この設定は実機検証前のドラフトです
設定値は出発点です。数値より耳での判断基準を優先して調整してください。
試聴シミュレーター
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DELAYはこの曲のBPM(97)から計算した8分音符の値を初期反映しています。GAIN/TREBLE/MIDDLE/BASSは一般的な目安値です。曲ごとの正確な設定値・判断基準は本文の①〜④セクションを確認してください。実録音ではなくWeb Audio APIによる合成音源です(NOTICE.md参照)。