RADWIMPS「前前前世(movie ver.)」は映画「君の名は。」主題歌として国民的知名度を誇る、BPM190・キーBメジャーの疾走感あふれる楽曲です。バンドスコアには3本のエレキギター・5弦エレキベース・ドラムス・パーカッションのパートが収録され、ギターTAB解説動画やコード譜も非常に豊富で、バンドアレンジの実例には事欠きません。原曲は野田洋次郎(Vo&Gt)と桑原彰(Gt)の実在2人ギター編成で製作されており(桑原は2024年10月に脱退し現在の編成は変わっていますが、この楽曲がリリースされた2016年当時から長く続いたのはこの2人体制です)、この記事では2人ギターのバンド運用・1人での宅録運用の両方に対応した設定を解説します。 ※設定値はあくまで出発点です。数値そのものより、以降で示す耳での判断基準を優先して微調整してください。
目指す音の分解
- リズムギター(野田): 疾走するAメロ・Bメロを支える8分/16分の細かいカッティングの役割。歪みを溜め込みすぎず、テンポについていける輪郭のはっきりしたエッジ感が理想です。
- リードギター(桑原): イントロ・間奏でカポを使った印象的なフレーズを弾く役割。曲の顔になる旋律なので、歌に埋もれない伸びと存在感を出します。
- ベース: 高速な8分・16分のリズムに一切崩れず食らいつく役割。サビでは音圧を上げつつも粒立ちを保ちます。
- BPM190という高速テンポでも歪みと空間系を溜め込みすぎず、疾走感の輪郭をはっきり残すのがこの曲の音作りの軸です。
① ギター:マルチエフェクター設定(GT-1000CORE / MS-3 / G6 / GE系など共通)
Guitar → コンプ(軽め) → ドライブ(中程度) → アンプモデル(クランチ〜軽い歪み)
→ ブースター(リードのみON) → ディレイ → リバーブ → Amp Out
- アンプモデル設定: GAIN 40〜45%(高速なピッキングでも音が団子にならない上限)/ TREBLE 55〜60%(テンポ感を殺さないエッジを出す範囲)/ MIDDLE 50%(削らない方針)/ BASS 40%(ベースの低域と被らない上限)/ LEVELは歌を邪魔しない音量が基準
- ドライブブロック: TS系、GAIN 25〜30%、TONE 55%、LEVEL 55%。「歪んでいる」より「エッジが立っている」と感じる程度に留めるのが判断基準で、これを超えると高速カッティングが団子になります
- ブースターブロック(リードのみ): クリーンブースト系、GAINは上げずLEVELのみ+3〜4dB程度。フレーズの輪郭だけを前に出し、歪み量が増えたと感じたらやり過ぎです
- ディレイブロック: BPM190から算出すると、8分 = 60000÷190 ≒ 316ms、付点8分 = 316×1.5 ≒ 474ms。リズムは8分316msを薄くタップし、イントロ・間奏のリードフレーズには付点8分474msを軽く重ねて疾走感を演出します
- リバーブ方針: ルーム系を薄めにMix 20〜25%程度。テンポが速い曲のため、深すぎるリバーブは残響が重なって輪郭を潰すので避けます
- パッチ対比表: バンドで2人ギターがいる場合はギター1(野田=リズム)・ギター2(桑原=リード)が役割固定のまま同時運用します。1人で両方を担当する場合(宅録・弾いてみた等)は、下記パッチをセクションごとに切り替えます
| 項目 | リズムパッチ(ギター1/野田用) | リードパッチ(ギター2/桑原用) |
|---|---|---|
| GAIN | 40% | 45% |
| ブースター | OFF | ON |
| ディレイMix | 8分/10% | 付点8分/20% |
| リバーブMix | 20% | 25% |
② ギター:マーシャルのみの場合(JCM900 / JCM2000 / DSL系)
- アンプ設定: GAIN 4(高速フレーズでも輪郭が潰れない上限)/ TREBLE 6(エッジを出す範囲)/ MIDDLE 5(削らない)/ BASS 4(ベースと被らない上限)/ PRESENCE 5(耳当たりが硬くならない上限)
- ピッキング強弱での展開の作り方: Aメロ・Bメロは手元を絞ってタイトに刻み、サビ・間奏は強めに弾き込んでフレーズの輪郭を前に出すのが基本です(2人編成なら野田=終始リズム、桑原=イントロ・間奏で前に出るイメージ)
- 足りない機能への対処: マーシャル単体はディレイ・リバーブが無いため、付点8分474msを再現できる空間系ペダルを1台足すと、イントロ・間奏のフレーズの疾走感が大きく変わります
③ ベース:マルチエフェクター/プロセッサー設定(GT-1000CORE / MS-3 / GT-1B系など共通)
Bass → コンプ → ドライブ/EQ(基本OFF) → アンプモデル(DI+アンプブレンド)
→ Amp/DI Out
- コンプ設定: スレッショルドは高速な8分・16分でも粒が揃う程度、レシオ3:1前後。高速なピッキングでもアタック(粒立ち)を潰さない上限がコンプの掛けすぎを判断する基準です
- アンプモデル設定: GAIN 35%(丸くなりすぎない上限)/ BASS 50%/ LOW-MID 50%(削らない方針)/ HIGH-MID 40%(ギターと被らない上限)/ TREBLE 35%(刺さらない範囲)/ LEVELは歌を邪魔しない音量が基準。DI+アンプの比率はDI7:アンプ3を起点に、高速なリズムでもアタック感が残る範囲で耳で微調整します
- ドライブ/EQブロック(使う場合のみ): 基本OFFですが、サビでわずかに厚みを足したい時のみ軽いドライブを薄くON。低音の輪郭を失わない上限まで下げるのが判断基準です
- 通常パッチ/サビパッチの対比表
| 項目 | 通常パッチ | サビパッチ(音圧を上げる場面) |
|---|---|---|
| コンプ量 | 軽め(粒立ち優先) | やや強め(音圧優先) |
| DI:アンプ比率 | 7:3 | 6:4 |
| ドライブ | OFF | 薄くON |
| LEVEL | 基準値 | +1〜2dB程度 |
④ ベース:アンプ(DI)のみの場合(Ampeg SVT系)
- アンプ設定: GAIN 3(音が割れない上限)/ ULTRA LO 軽め(団子にならない範囲)/ ULTRA HI OFF(硬くなりすぎない)/ BASS 5〜6/ MIDDLE 5(削らない)/ TREBLE 3〜4(刺さらない範囲)
- 指弾き/ピック弾きでの展開の作り方: 高速な8分・16分を安定して刻むには指弾きが基本ですが、サビだけピックに持ち替えてアタックと音圧を足すと展開の差が作りやすくなります
- 足りない機能への対処: アンプ単体はコンプの細かい調整ができないため、高速なリズムでも粒立ちを均す外部コンプペダルを1台足すと通常/サビの差が安定します
セクション別の組み立て
- イントロ: リードギター(桑原・カポ使用)のフレーズを主役に、リズムギターは音量を抑えて土台を作ります
- Aメロ: 歌を邪魔しないようリズムパッチのゲインを絞り、ベースは高速な8分をタイトに刻みます
- Bメロ: サビに向けディレイMixとベースの密度を少しずつ上げ、展開の切り替わりを演出します
- サビ: リードパッチに切り替えブースターと付点8分474msのディレイを軽く重ね、ベースはサビパッチで音圧を上げます
- 間奏: リードギターのフレーズを再び前に出し、高速なピッキングでも輪郭を保ったまま弾き切ります
- アウトロ: 音数を減らし、ディレイの余韻だけを残して疾走感を保ったまま着地します
まとめ
- BPM190のディレイ基準値は8分316ms・付点8分474msです(高速テンポなので薄めのMixが基準です)
- 2人ギター編成なら野田=リズム/桑原=リードの役割固定、1人録音ならパッチ切り替えで対応します
- 「歪みは溜め込みすぎず、エッジで聴かせる」がこの曲の音作りの核心です
- 高速な8分・16分のリズムでもベースの粒立ちを崩さないことが判断基準の軸になります
- 次回は同じ邦楽ロックの定番曲の音作りも解説予定です
※この設定は実機検証前のドラフトです
設定値は出発点です。数値より耳での判断基準を優先して調整してください。