YOASOBI「夜に駆ける」はBPM130、キーはG#/A♭のアップテンポなダンスポップナンバーです。原曲はシンセと生楽器が同居するサウンドで制作されていますが、ライブでは専任のギター・ベース・キーボード・ドラムを含むバンド編成で演奏されており、バンド形式での弾いてみた動画も投稿されています。この記事では、マルチエフェクターとマーシャルアンプ単体それぞれで、このバンドサウンドをギター・ベース・キーボードで再現するための設定値と判断基準をまとめました。 ※設定値はあくまで出発点です。数値そのものより、以降で示す耳での判断基準を優先して微調整してください。
目指す音の分解
- リズムギター: 8分主体のカッティングで曲を軽やかに前へ推進する役割。歪みは薄めにして、ポップな曲調に合う軽さを残すのが理想です。
- リードギター: サビ・間奏で分かりやすい輪郭のフレーズを弾く役割。歌とシンセの隙間を縫うように前に出る、刺さらない伸びが求められます。
- ベース: 8分/16分でダンス感のあるリズムを支える役割。粒立ちを保ちつつ、サビでは音圧を少し上げて曲の高揚感を後押しします。
- キーボード: イントロ・サビで前に出るアルペジオやパッドを担う役割。原曲のシンセ主体の質感を、伴奏に埋もれさせずに聴かせるのが仕事です。
- ミドルを削らずに歪みは薄く重ねる ― この曲のポップさと疾走感を両立するバンドサウンドの土台になる考え方です。
① ギター:マルチエフェクター設定(GT-1000CORE / MS-3 / G6 / GE系など共通)
Guitar → コンプ(軽め) → ドライブ(TS系、薄め) → アンプモデル(Marshall系クランチ)
→ ブースター(リードのみON) → ディレイ → リバーブ → Amp Out
- アンプモデル設定: GAIN 30〜35%(コードの音程が濁らない上限)/ TREBLE 55〜60%(耳に刺さらない範囲の上限)/ MIDDLE 55〜60%(削らない方針。キーボードやシンセに埋もれない目安)/ BASS 45%(ベースの帯域と喧嘩しない上限)/ LEVEL はバンド全体の中で埋もれない音量を基準に調整
- ドライブブロック: TS系ドライブ、GAIN 20〜25%、TONE 50%、LEVEL 50%。ポップな曲調を壊さず、和音が濁らない上限まで下げるのが判断基準です
- ブースターブロック(リードのみ): クリーンブースト系、GAINは上げずLEVELのみ+3dB程度。音色を変えずに前に出すのが目的で、歪みが増えたと感じたらやり過ぎです
- ディレイブロック: BPM130から算出すると、8分 = 60000÷130 ≈ 462ms、付点8分 = 60000÷130×1.5 ≈ 692ms。リズムは8分462msを薄くタップ、リードは付点8分692msでフレーズに広がりを出します
- リバーブ方針: ホール系を薄めに、Mix 15〜20%程度。リード時のみ25%前後まで上げて奥行きを足す程度に留めます
- リズム/リードのパッチ対比表: この曲はライブ・弾いてみたとも1人のギタリストによる演奏が中心のため、セクションごとに下記のパッチを切り替えて運用します
| 項目 | リズムパッチ | リードパッチ |
|---|---|---|
| GAIN | 30% | 35% |
| ブースター | OFF | ON |
| ディレイMix | 8分/10% | 付点8分/25% |
| リバーブMix | 15% | 20〜25% |
② ギター:マーシャルのみの場合(JCM900 / JCM2000 / DSL系)
- アンプ設定: GAIN 3〜4(和音の濁りが出ない上限)/ TREBLE 5〜6(耳に刺さらない範囲)/ MIDDLE 5〜6(削らない)/ BASS 4(ベースと帯域が被らない上限)/ PRESENCE 4(サビで耳が痛くならない上限)
- ピッキング強弱での展開: Aメロは手元を絞って軽く、サビは強めに弾き込んでゲイン感を上乗せする。ピッキングだけでリズムとリードの音量差を作るのが基本です
- 足りない機能への対処: マーシャル単体だとディレイ・リバーブが無いため、このディレイ計算(付点8分692ms)を再現できる空間系ペダルを1台足すと、サビの伸びが大きく変わります
③ ベース:マルチエフェクター/プロセッサー設定(GT-1000CORE / MS-3 / GT-1B系など共通)
Bass → コンプ → ドライブ/EQ(使う場合のみ) → アンプモデル(DI+アンプブレンド)
→ Amp/DI Out
- コンプ設定: スレッショルドはピッキング/フィンガリングのばらつきが均される程度、レシオ3:1前後。アタック(粒立ち)を潰さない上限がコンプの掛けすぎを判断する基準です
- アンプモデル設定: GAIN 30〜35%(音圧を上げても音が潰れない上限)/ BASS 55%/ LOW-MID 50%(削らない方針)/ HIGH-MID 45%(ギターの帯域と被らない上限)/ TREBLE 40%(耳に刺さらない範囲)/ LEVEL はギター・キーボードに埋もれない音量を基準に調整。DI+アンプモデルのブレンド比率は指弾きのアタック感が残る範囲でアンプ側の色を混ぜるのが判断基準で、DI7:アンプ3程度から耳で微調整します
- ドライブ/EQブロック(使う場合のみ): サビで音圧を上げたい時のみ軽いドライブ系を薄くON。低音の輪郭が潰れて団子にならない上限まで下げるのが判断基準です
- 通常パッチ/サビパッチの対比表
| 項目 | 通常パッチ | サビパッチ(音圧を上げる場面) |
|---|---|---|
| コンプ量 | 軽め(粒立ち優先) | やや強め(音圧優先) |
| DI:アンプ比率 | 7:3 | 6:4 |
| ドライブ | OFF | 薄くON |
| LEVEL | 基準値 | +2〜3dB程度 |
④ ベース:アンプ(DI)のみの場合(Ampeg SVT系)
- アンプ設定: GAIN 4〜5(音が割れない上限)/ ULTRA LO OFF〜軽め(低音が団子にならない範囲)/ ULTRA HI 軽め(指弾きのアタックが埋もれない程度)/ BASS 5〜6/ MIDDLE 5(削らない)/ TREBLE 4(耳に刺さらない範囲)
- 指弾き/ピック弾きでの展開: Aメロは指弾きで丸く、サビはピック弾きに切り替えてアタックと音圧を上げる。奏法の切り替えだけで通常/サビの音圧差を作るのが基本です
- 足りない機能への対処: アンプ単体だとコンプ・EQの細かい調整ができないため、粒立ちを均す外部コンプペダルを1台足すと、通常パッチとサビパッチの差がより安定して作れます
⑤ キーボード/シンセ音作り
- 音色カテゴリ選定: アナログシンセ系のアルペジオ/パッド音色を軸にします。イントロ・サビで独立して聴こえるだけの存在感がありつつ、ギターの帯域と喧嘩しない音色かどうかを耳で確認するのが選定基準です
- EQ方針: 200〜400Hz付近はギターのコード感と被りやすいのでバンド全体を鳴らした状態で耳で確認しながら削り、2〜4kHz付近のアルペジオの輪郭は他パートの隙間があるかを確認した上で持ち上げます
- 空間系: BPM130から算出した8分462ms・付点8分692msを流用します。アルペジオ部分は8分462msのディレイを薄くかけて粒を整え、サビのパッド音色には付点8分692msのディレイとリバーブで広がりを足します
- セクションごとの音色/音量運用方針: イントロはアルペジオ音色を主役として前に出し、Aメロ・Bメロはパッド寄りの音色に切り替えて音量を落とし、サビは再びアルペジオ/パッドを重ねて音量を上げ、原曲のシンセ主体の質感を再現します
セクション別の組み立て
- イントロ: キーボードのアルペジオを主役に、ギターはリズムパッチで音数を抑えて土台に徹します
- Aメロ: ボーカルを邪魔しないよう、ギターのゲインとリバーブを最小に絞り、ベースは指弾き寄りの丸い音圧、キーボードはパッド音色で控えめに鳴らします
- Bメロ: サビに向けてギターのディレイMixを少しずつ上げ、ベースとキーボードもLEVELを段階的に上げて期待感を作ります
- サビ: ギターはリードパッチに切り替え、ブースターとディレイ(付点8分692ms)をONにして音を開放的に広げます。ベースはサビパッチ、キーボードはアルペジオ/パッドを重ねて音圧を上げ、曲の高揚感を後押しします
- 落ちサビ: 音数を減らし、ギターはリバーブだけをやや残し、ベースは通常パッチに戻し、キーボードもパッド音色だけを薄く残して余韻を作ります
まとめ
- BPM130のディレイ基準値は8分462ms・付点8分692msです
- ミドルを削らず歪みを薄く重ねるのが、このサイト共通の考え方です
- ギターはリード/リズムのパッチ切り替え、ベースは通常/サビパッチの切り替え、キーボードはアルペジオ/パッドの音色切り替えで曲の展開を作ります
- 次回は同じ第1バッチの「グッバイ宣言」(Chinozo)の音作りも解説予定です
※この設定は実機検証前のドラフトです
設定値は出発点です。数値より耳での判断基準を優先して調整してください。