Mr.Children「しるし」は、BPM74・キーC♯/D♭メジャーの7分を超える長尺バラードです。バンドスコアにはVo/Key×4/A.Pf/E.G/A.G/B/Drというフルバンド+ピアノの編成が明記されており、ライブ映像作品でもバンド生演奏が確認できる定番曲です。原曲は桜井和寿(Vo/Gt)と田原健一(Gt)の2人ギター編成が基本で、加えて曲を象徴する印象的なピアノフレーズが冒頭から鳴り続けるため、この記事ではギター・ベースに加えてキーボード(ピアノ)の設定値もまとめました。 ※設定値はあくまで出発点です。数値そのものより、以降で示す耳での判断基準を優先して微調整してください。
目指す音の分解
- リズムギター(桜井): Aメロ・Bメロで歌を支えるアルペジオ・カッティングを担う役割。歪みは薄く、ピアノの粒立ちと歌詞の輪郭を邪魔しない透明感が理想です。
- リードギター(田原): サビ・間奏で伸びのあるフレーズを重ねる役割。音数を絞りつつ、長尺曲の展開に沿って徐々に存在感を増していく余韻が重要です。
- ベース(中川敬輔): ロングトーン主体で曲全体の低音の土台をゆったり支える役割。バラードらしく粒立ちよりも安定した伸びが基準になります。
- キーボード/ピアノ: イントロから曲を通して鳴り続ける、曲の顔となるピアノフレーズを担う役割。ギター・ボーカルと帯域が被らない、丸く芯のある音色が理想です。
- ピアノのフレーズを軸に、ギターは歪ませすぎず余白を残して長尺の展開を支えるのがこの曲の音作りの軸です。
① ギター:マルチエフェクター設定(GT-1000CORE / MS-3 / G6 / GE系など共通)
Guitar → コンプ(軽め) → ドライブ(薄め) → アンプモデル(クリーン〜薄クランチ)
→ ブースター(リードのみ) → ディレイ → リバーブ → Amp Out
- アンプモデル設定: GAIN 20〜25%(アルペジオの一音一音が潰れない上限)/ TREBLE 50%(ピアノの高域と刺さり合わない上限)/ MIDDLE 55%(削らない方針)/ BASS 40%(ベース・ピアノの低域と被らない上限)/ LEVELは歌とピアノを邪魔しない音量が基準
- ドライブブロック: TS系、GAIN 10〜15%、TONE 50%、LEVEL 50%。バラードの静けさを壊さず、コードの余韻が濁らない上限まで下げるのが判断基準です
- ブースターブロック(リードのみ): クリーンブースト系、GAINは上げずLEVELのみ+2〜3dB程度。サビ・間奏のフレーズが前に出過ぎて歌やピアノを食わない範囲に収めるのが判断基準です
- ディレイブロック: BPM74から算出すると、8分 = 60000÷74 ≒ 810.8ms、付点8分 = 810.8×1.5 ≒ 1216.2ms。長尺曲なのでリズムは8分810.8msを薄くタップし、リードは付点8分1216.2msで間奏のフレーズに広がりを持たせます
- リバーブ方針: ホール系を深めにMix 25〜30%程度。バラードなので、残響で歌詞やピアノのアタックがぼやけ始めたら深すぎるサインです
- パッチ対比表: バンドで2人ギターがいる場合はギター1(桜井=リズム)・ギター2(田原=リード)が役割固定のまま同時運用します。1人で両方を担当する場合(宅録・弾いてみた等)は、下記パッチをセクションごとに切り替えます
| 項目 | リズムパッチ(ギター1/桜井用) | リードパッチ(ギター2/田原用) |
|---|---|---|
| GAIN | 20% | 25% |
| ブースター | OFF | ON |
| ディレイMix | 8分/12% | 付点8分/22% |
| リバーブMix | 25% | 30% |
② ギター:マーシャルのみの場合(JCM900 / JCM2000 / DSL系)
- アンプ設定: GAIN 2〜3(アルペジオの粒立ちが潰れない上限)/ TREBLE 5(ピアノと刺さり合わない範囲)/ MIDDLE 6(削らない)/ BASS 4(ベース・ピアノと被らない上限)/ PRESENCE 3〜4(耳当たりが硬くならない上限)
- ピッキング強弱での展開の作り方: Aメロ・Bメロは手元を軽く絞ってアルペジオを弾き、サビ・後半にかけて徐々に弾き込みを強めて長尺の盛り上がりを作るのが基本です(2人編成なら桜井=終始リズム、田原=サビ・間奏で前に出るイメージ)
- 足りない機能への対処: マーシャル単体はディレイ・リバーブが無いため、付点8分1216.2msの空間を再現できる空間系ペダルを1台足すと、間奏フレーズの広がりが大きく変わります
③ ベース:マルチエフェクター/プロセッサー設定(GT-1000CORE / MS-3 / GT-1B系など共通)
Bass → コンプ → ドライブ/EQ(基本OFF) → アンプモデル(DI+アンプブレンド)
→ Amp/DI Out
- コンプ設定: スレッショルドはロングトーンの伸びが均一に聴こえる程度、レシオ3:1前後。アタック(粒立ち)を潰さず伸びを残す上限がコンプの掛けすぎを判断する基準です
- アンプモデル設定: GAIN 30〜35%(丸くなりすぎない上限)/ BASS 50%/ LOW-MID 50%(削らない方針)/ HIGH-MID 40%(ギター・ピアノと被らない上限)/ TREBLE 30%(刺さらない範囲)/ LEVELは歌とピアノを邪魔しない音量が基準。DI+アンプの比率はDI7:アンプ3を起点に、ロングトーンの伸びが残る範囲でアンプ側の色を混ぜるのが判断基準です
- ドライブ/EQブロック(使う場合のみ): 基本OFFですが、サビでわずかに厚みを足したい時のみ軽いドライブを薄くON。低音の輪郭を失わない上限まで下げるのが判断基準です
- 通常パッチ/サビパッチの対比表
| 項目 | 通常パッチ | サビパッチ(音圧を上げる場面) |
|---|---|---|
| コンプ量 | 軽め(伸び優先) | やや強め(音圧優先) |
| DI:アンプ比率 | 7:3 | 6:4 |
| ドライブ | OFF | 薄くON |
| LEVEL | 基準値 | +1〜2dB程度 |
④ ベース:アンプ(DI)のみの場合(Ampeg SVT系)
- アンプ設定: GAIN 2〜3(音が割れない上限)/ ULTRA LO 軽め(団子にならない範囲)/ ULTRA HI OFF(硬くなりすぎない)/ BASS 5/ MIDDLE 5(削らない)/ TREBLE 3(刺さらない範囲)
- 指弾き/ピック弾きでの展開の作り方: 曲全体を指弾きでロングトーン主体に丸く支え、サビだけピックに持ち替えてわずかにアタックを足すと通常/サビの差が作りやすくなります
- 足りない機能への対処: アンプ単体はコンプの細かい調整ができないため、ロングトーンの伸びを均す外部コンプペダルを1台足すと音の安定感が増します
⑤ キーボード/シンセ音作り
- 音色カテゴリ: 生ピアノ系(アコースティックピアノ)。イントロから曲を通して鳴り続け、伴奏に埋もれず主旋律と絡むフレーズとして独立して聴こえるかが選定の判断基準です(バンドスコアにもA.Pf=アコースティックピアノのパートが単独で収録されるほど独立性の高いフレーズです)。なお、レコーディングにおけるこのピアノフレーズはプロデューサーの小林武史によるものとされており、本セクションの数値はあくまで「その音とフレーズをバンド編成で再現する」ための設定として捉えてください。ライブでは専任のサポートキーボーディスト(近年のツアーではSUNNYがこの役割を担当)が鍵盤パートを担当する運用が一般的です。
- EQ方針: 300〜500Hz付近をギター・ベースと被らない範囲でわずかにカット。バンド全体で音の隙間があるかを耳で確認しながら削るのが基準です
- 空間系: BPM74から8分810.8ms・付点8分1216.2ms。曲を通して鳴り続けるフレーズには付点8分1216.2msを薄くMixして奥行きを足し、歌が入るAメロ・Bメロではディレイを絞ってコード感と歌詞の聴き取りやすさを優先します
- セクションごとの運用: イントロはピアノフレーズを主役に音量を上げ、Aメロ・Bメロは歌の伴奏に回って音量を絞り、サビ・間奏では再びフレーズを前に出して曲の顔を強調します。長尺曲のため、後半にかけてリバーブを少しずつ深くして広がりを持たせるのも効果的です
セクション別の組み立て
- イントロ: キーボードのピアノフレーズを主役に、ギターはリズムパッチで音量を抑えて土台だけを作ります
- Aメロ: 歌とピアノを邪魔しないようリズムギターは音量を絞り、ベースはロングトーンで低音を安定させます
- Bメロ: サビに向けディレイMixとリバーブを少しずつ深くし、ベースのコンプもやや強めに移行して展開の高まりを演出します
- サビ: ギターはリードパッチに切り替えブースターと付点8分1216.2msのディレイをONにし、ベースはサビパッチで音圧を上げ、キーボードはフレーズを前に出して曲の顔を強調します
- 間奏: リードギター(田原)とキーボードのフレーズを対等に鳴らし、互いの余白を潰さないよう音量バランスを耳で確認します
- 後半〜アウトロ: リバーブを深めにして曲全体の広がりを増しつつ、音数を減らしてピアノとディレイの余韻だけを残して着地します
まとめ
- BPM74のディレイ基準値は8分810.8ms・付点8分1216.2msです
- 2人ギター編成なら桜井=リズム/田原=リードの役割固定、1人録音ならパッチ切り替えで対応します
- ピアノフレーズを軸に据え、ギターは歪ませすぎず余白を残すのがこの曲最大の判断基準です
- キーボードはレコーディング時のフレーズをバンド編成で再現する前提で設定を組むのが実践的です
- 次回は同アーティストの別の代表曲の音作りも解説予定です
※この設定は実機検証前のドラフトです
設定値は出発点です。数値より耳での判断基準を優先して調整してください。