aiko「カブトムシ」はBPM75、キーE♭のピアノイントロが印象的なバラード曲です。aikoのライブ・サポートバンドは弥吉淳二・芳賀義彦という実在の2人ギタリストを含む編成で、バンドスコアもアコースティック/エレキの2本ギター(G×2)構成で出版されています。加えて曲を貫くピアノフレーズが曲の顔となっており、キーボード(佐藤達哉)も編成に含まれます。この記事では2本ギター+キーボードのバンドサウンドを再現するための設定値と判断基準をまとめました。 ※設定値はあくまで出発点です。数値そのものより、以降で示す耳での判断基準を優先して微調整してください。
目指す音の分解
- リズムギター: Aメロ・Bメロを支えるアルペジオ/カッティングの役割。歪みは薄く、歌の切なさを包む丸みのある質感が理想です。
- リードギター: サビ・間奏でフレーズを彩る役割。輪郭ははっきりさせつつ、耳に刺さらない伸びを狙います。
- ベース: ルートを軸に隙間を埋める低音の役割。スローテンポな曲なので、もたつかない粒立ちが特に重要です。
- キーボード: 曲を貫くピアノフレーズが曲の顔になる役割です。ギター・ボーカルと帯域が被らない硬めの粒立ちが理想です。
- バンドで2人ギターがいる場合: aikoの実際のサポートバンドもギター2人体制(弥吉淳二/芳賀義彦)です。ギター1は曲を通してリズム担当、ギター2は曲を通してリード担当という役割固定にし、2本を同時に鳴らして分解を作ります。
- 1人で両方を担当する場合(宅録・弾いてみた等): セクションごとにリズム/リードのパッチを切り替えて同じ分解を1人で再現します。
- 強く歪ませず、ピアノと歌の余韻を最優先に残すのがこの曲の音作りの軸です。
① ギター:マルチエフェクター設定(GT-1000CORE / MS-3 / G6 / GE系など共通)
Guitar → コンプ(軽め) → ドライブ(薄め・使う場合のみ) → アンプモデル(クリーン〜薄クランチ)
→ ブースター(リードのみON) → ディレイ → リバーブ → Amp Out
- アンプモデル設定: GAIN 20〜25%(アルペジオの粒が潰れない上限)/ TREBLE 55%(耳に刺さらない範囲)/ MIDDLE 55〜60%(削らない方針)/ BASS 45%(ベース・キーボードと被らない上限)/ LEVELは歌とピアノを邪魔しない音量が基準
- ドライブブロック(使う場合のみ): TS系、GAIN 15〜20%、TONE 50%、LEVEL 50%。アルペジオの一音一音が団子にならない上限まで下げるのが判断基準です
- ブースターブロック(リードのみ): クリーンブースト系、GAINは上げずLEVELのみ+3dB程度。フレーズだけを前に出し、歪み感が変わったらやり過ぎです
- ディレイブロック: BPM75から算出すると、8分 = 60000÷75 = 800ms、付点8分 = 60000÷75×1.5 = 1200ms。スローテンポなのでタップ音が目立ちやすく、単独のリピートが耳につかない上限までMixとフィードバックを絞るのが判断基準です。リズムは8分800msを薄く、リードは付点8分1200msでフレーズに余韻を出します
- リバーブ方針: ホール系を薄めにMix 18%程度。リード時のみ25〜28%前後まで上げ、ピアノと共鳴するような奥行きを足します
- パッチ対比表: バンドで2人ギターがいる場合は、ギター1・ギター2がそれぞれ下記のパッチを曲を通して同時に鳴らし続けます。1人で両方を担当する場合は、この2パッチをセクションごとに切り替えて使ってください
| 項目 | リズムパッチ(ギター1/1人の場合は基本パッチ) | リードパッチ(ギター2/1人の場合はサビ等で切替) |
|---|---|---|
| GAIN | 20% | 25% |
| ブースター | OFF | ON |
| ディレイMix | 8分/8% | 付点8分/18% |
| リバーブMix | 18% | 27% |
② ギター:マーシャルのみの場合(JCM900 / JCM2000 / DSL系)
- アンプ設定: GAIN 3(アルペジオの粒立ちが潰れない上限)/ TREBLE 5〜6(刺さらない範囲)/ MIDDLE 5〜6(削らない)/ BASS 4(ベース・キーボードと被らない上限)/ PRESENCE 4(耳当たりが硬くならない上限)
- ピッキング強弱での展開: Aメロ・Bメロは手元を絞って歌とピアノを支え、サビ・間奏はやや強めに弾き込んでフレーズを浮き立たせるのが基本です
- 足りない機能への対処: マーシャル単体はディレイ・リバーブが無いため、付点8分1200msを再現できる空間系ペダルを1台足すと、サビ・間奏の余韻が大きく変わります
③ ベース:マルチエフェクター/プロセッサー設定(GT-1000CORE / MS-3 / GT-1B系など共通)
Bass → コンプ → ドライブ/EQ(基本OFF) → アンプモデル(DI+アンプブレンド)
→ Amp/DI Out
- コンプ設定: スレッショルドは指弾きのニュアンス差を潰さない程度、レシオ3:1前後。アタック(粒立ち)を潰さずサステインだけ均す上限がコンプの掛けすぎを判断する基準です
- アンプモデル設定: GAIN 35%(丸くなりすぎない上限)/ BASS 50%/ LOW-MID 50%(削らない方針)/ HIGH-MID 40%(ギター・キーボードと被らない上限)/ TREBLE 35%(刺さらない範囲)/ LEVELは歌とピアノを邪魔しない音量が基準。DI+アンプの比率はDI7:アンプ3を起点に、指弾きのアタック感が残る範囲で耳で微調整します
- ドライブ/EQブロック(使う場合のみ): 基本OFFですが、サビでわずかに厚みを足したい時のみ軽いドライブを薄くON。低音の輪郭を失わない上限まで下げるのが判断基準です
- 通常パッチ/サビパッチの対比表
| 項目 | 通常パッチ | サビパッチ(音圧を上げる場面) |
|---|---|---|
| コンプ量 | 軽め(粒立ち優先) | やや強め(音圧優先) |
| DI:アンプ比率 | 7:3 | 6:4 |
| ドライブ | OFF | 薄くON |
| LEVEL | 基準値 | +1〜2dB程度 |
④ ベース:アンプ(DI)のみの場合(Ampeg SVT系)
- アンプ設定: GAIN 3(音が割れない上限)/ ULTRA LO 軽め(団子にならない範囲)/ ULTRA HI OFF(硬くなりすぎない)/ BASS 5/ MIDDLE 5(削らない)/ TREBLE 3〜4(刺さらない範囲)
- 指弾き/ピック弾きでの展開: 基本は指弾きで丸く支え、サビのみ軽くピックに持ち替えてアタックを足す程度に留めます
- 足りない機能への対処: アンプ単体はコンプの細かい調整ができないため、サステインを均す外部コンプペダルを1台足すと通常/サビの差が安定します
⑤ キーボード/シンセ音作り
- 音色カテゴリ: 生ピアノ/エレピ系。曲を貫くフレーズが伴奏に埋もれず単独で聴こえるかが選定の判断基準です
- EQ方針: 250〜400Hz付近をギター・ベースと被らない範囲でわずかにカット。バンド全体で音の隙間があるかを耳で確認しながら削るのが基準です
- 空間系: BPM75から8分800ms・付点8分1200ms。イントロ・間奏のフレーズには付点8分1200msを薄くMixし、Aメロ・Bメロの伴奏部分はディレイを絞ってコード感を優先します
- セクションごとの運用: イントロはフレーズを主役に音量を上げ、Aメロ・Bメロは伴奏に徹して絞り、サビ・間奏は再び前に出して曲の顔を強調します
セクション別の組み立て
- イントロ: キーボードのピアノフレーズを主役に、ギターはリズムパッチで音量を抑えて土台を作ります
- Aメロ・Bメロ: ギターはリズムパッチのアルペジオ中心、キーボードは伴奏に回り、ベースは粒立ちを優先してもたつきを防ぎます
- サビ: ギターはリードパッチに切り替えブースターと付点8分1200msのディレイをONにし、ベースはサビパッチで音圧を上げ、キーボードは再びフレーズを前に出します
- 間奏: キーボードのピアノフレーズとリードギターを絡ませ、余韻を残しながら盛り上げます
- アウトロ: 音数を減らし、リバーブとピアノの余韻だけを残して静かに着地します
まとめ
- BPM75のディレイ基準値は8分800ms・付点8分1200msです(スローテンポのためMix・フィードバックは控えめが基準)
- aikoは弥吉淳二・芳賀義彦の実在2人ギター編成のため、バンドは2本同時運用、1人なら切り替え運用で対応します
- イントロから曲全体を貫くピアノフレーズを主役として扱うのがこの曲最大の判断基準です
- 次回は同じaikoの他曲の音作りも解説予定です
※この設定は実機検証前のドラフトです
設定値は出発点です。数値より耳での判断基準を優先して調整してください。