Mr.Children「HANABI」は映画主題歌としても知られる、BPM112・キーC♯/D♭メジャーの壮大な情感を持つミドルテンポ曲です。バンドスコアにはボーカル・コーラス・キーボード・ストリングス・アコースティックピアノ・エレキギター・アコースティックギター(半音下げ)・エレキベース(半音下げ)・ドラムスのパートが収録され、ツアーでのバンド生演奏映像も実在するなど、バンドアレンジの実例には事欠きません。原曲は桜井和寿(Vo/Gt)と田原健一(Gt)の2人ギター編成を基本としており、この記事では2人ギターのバンド運用・1人での宅録運用の両方に対応した設定を解説します。 ※設定値はあくまで出発点です。数値そのものより、以降で示す耳での判断基準を優先して微調整してください。
目指す音の分解
- リズムギター(桜井): Aメロ・Bメロでコードのストロークやアルペジオを支え、サビでは音の厚みを増していく役割。歌を邪魔しない透明感のあるクリーン〜軽いクランチが基本です。
- リードギター(田原): イントロの印象的なアルペジオ・フレーズと、間奏やサビ終盤での存在感のあるオブリガードを担う役割。音数を欲張らず、伸びのある音色で歌の余白を埋めます。
- ベース: 曲全体で低音の土台を支え続け、サビに向けて音圧を少しずつ持ち上げていく役割。ロングトーンでも輪郭を失わない安定感が重要です。
- 歪みを溜め込みすぎず、Aメロの静けさからサビの高揚感までのダイナミクスの落差をクリーン〜クランチの範囲で描くのがこの曲の音作りの軸です。
① ギター:マルチエフェクター設定(GT-1000CORE / MS-3 / G6 / GE系など共通)
Guitar → コンプ(軽め) → ドライブ(サビのみ薄くON) → アンプモデル(クリーン〜クランチ)
→ ブースター(リードのみ) → ディレイ → リバーブ → Amp Out
- アンプモデル設定: GAIN 30〜35%(Aメロのクリーンさを保てる上限)/ TREBLE 55%(歌声の帯域を邪魔しない範囲)/ MIDDLE 55%(削らない方針)/ BASS 40%(ベースの低域と被らない上限)/ LEVELは歌を邪魔しない音量が基準
- ドライブブロック: TS系、GAIN 20〜25%、TONE 50%、LEVEL 55%。サビだけ薄くONにして音圧を足す程度に留めるのが判断基準で、Aメロ・Bメロで歪みが目立ち始めたら下げすぎです
- ブースターブロック(リードのみ): クリーンブースト系、GAINは上げずLEVELのみ+3dB程度。イントロ・間奏のフレーズが歌より前に出過ぎない範囲に収めるのが判断基準です
- ディレイブロック: BPM112から算出すると、8分 = 60000÷112 ≒ 535.7ms、付点8分 = 535.7×1.5 ≒ 803.6ms。イントロのアルペジオには付点8分803.6msを深めに重ねて広がりを出し、サビのバッキングには8分535.7msを薄くタップして輪郭を保ちます
- リバーブ方針: ホール系をやや深めにMix 30〜35%程度。壮大な曲調に合わせて残響を残しつつ、歌詞が聴き取りにくくなったら深すぎるサインです
- パッチ対比表: バンドで2人ギターがいる場合はギター1(桜井=リズム)・ギター2(田原=リード)が役割固定のまま同時運用します。1人で両方を担当する場合(宅録・弾いてみた等)は、下記パッチをセクションごとに切り替えます
| 項目 | リズムパッチ(ギター1/桜井用) | リードパッチ(ギター2/田原用) |
|---|---|---|
| GAIN | 30% | 35% |
| ブースター | OFF | ON |
| ディレイMix | 8分/15% | 付点8分/30% |
| リバーブMix | 25% | 35% |
② ギター:マーシャルのみの場合(JCM900 / JCM2000 / DSL系)
- アンプ設定: GAIN 3(Aメロのクリーンさが保てる上限)/ TREBLE 5〜6(歌の帯域を邪魔しない範囲)/ MIDDLE 6(削らない)/ BASS 4(ベースと被らない上限)/ PRESENCE 4(耳当たりが硬くならない上限)
- ピッキング強弱での展開の作り方: Aメロ・Bメロは手元を絞って輪郭のあるクリーンを保ち、サビは強めに弾き込んでゲインチャンネルに近い音圧を作るのが基本です(2人編成なら桜井=終始リズム、田原=イントロ・間奏で前に出るイメージ)
- 足りない機能への対処: マーシャル単体はディレイ・リバーブが無いため、付点8分803.6msの空間を再現できる空間系ペダルを1台足すと、イントロのアルペジオの広がりが大きく変わります
③ ベース:マルチエフェクター/プロセッサー設定(GT-1000CORE / MS-3 / GT-1B系など共通)
Bass → コンプ → ドライブ/EQ(サビのみ薄くON) → アンプモデル(DI+アンプブレンド)
→ Amp/DI Out
- コンプ設定: スレッショルドはロングトーンでも音量が安定する程度、レシオ3:1前後。指弾きのアタック(粒立ち)を潰さない上限がコンプの掛けすぎを判断する基準です
- アンプモデル設定: GAIN 35%(丸くなりすぎない上限)/ BASS 55%/ LOW-MID 50%(削らない方針)/ HIGH-MID 40%(ギターと被らない上限)/ TREBLE 30%(刺さらない範囲)/ LEVELは歌を邪魔しない音量が基準。DI+アンプの比率はDI7:アンプ3を起点に、指弾きのアタック感が残る範囲でアンプ側の色を混ぜるのが判断基準です
- ドライブ/EQブロック(使う場合のみ): 基本OFFですが、サビでわずかに厚みを足したい時のみ軽いドライブを薄くON。低音の輪郭を失わない上限まで下げるのが判断基準です
- 通常パッチ/サビパッチの対比表
| 項目 | 通常パッチ | サビパッチ(音圧を上げる場面) |
|---|---|---|
| コンプ量 | 軽め(粒立ち優先) | やや強め(音圧優先) |
| DI:アンプ比率 | 7:3 | 6:4 |
| ドライブ | OFF | 薄くON |
| LEVEL | 基準値 | +1〜2dB程度 |
④ ベース:アンプ(DI)のみの場合(Ampeg SVT系)
- アンプ設定: GAIN 3(音が割れない上限)/ ULTRA LO 軽め(団子にならない範囲)/ ULTRA HI OFF(硬くなりすぎない)/ BASS 5〜6/ MIDDLE 5(削らない)/ TREBLE 3(刺さらない範囲)
- 指弾き/ピック弾きでの展開の作り方: 曲全体を通しては指弾きでロングトーンを安定させ、サビだけピックに持ち替えてアタックと音圧を足すと通常/サビの差が作りやすくなります
- 足りない機能への対処: アンプ単体はコンプの細かい調整ができないため、ロングトーンの粒立ちを均す外部コンプペダルを1台足すと音量が安定します
セクション別の組み立て
- イントロ: リードギター(田原)のアルペジオを主役に付点8分803.6msのディレイを深めにかけ、リズムギターは音量を抑えて土台を作ります
- Aメロ: 歌を邪魔しないようリズムパッチのゲインを絞り、ベースは通常パッチでロングトーンを支えます
- Bメロ: サビに向けディレイMixとリバーブを少しずつ深くし、展開の高まりを演出します
- サビ: リードパッチに切り替えブースターとドライブを薄く重ね、ベースはサビパッチで音圧を上げます
- 間奏: イントロのアルペジオを再び前に出し、リバーブを深めのまま余韻を残します
- アウトロ: 音数を減らし、ディレイとリバーブの余韻だけを残して静かに着地します
まとめ
- BPM112のディレイ基準値は8分535.7ms・付点8分803.6msです
- 2人ギター編成なら桜井=リズム/田原=リードの役割固定、1人録音ならパッチ切り替えで対応します
- 「歪みを溜め込みすぎず、クリーン〜クランチの範囲でダイナミクスの落差を描く」がこの曲の音作りの核心です
- ベースはロングトーンの粒立ちを保ちながら、サビで音圧を持ち上げることが判断基準の軸になります
- 次回は同アーティストの別の代表曲の音作りも解説予定です
※この設定は実機検証前のドラフトです
設定値は出発点です。数値より耳での判断基準を優先して調整してください。